燃えよドワーフ！（Enter the Dwarf）

ドワーフ。――それは商業作品にて、決して表に出てこない脇役である。理由は絵面が良くないので、大衆受けしないのだ。本作は麗しいエルフを差し置いて、ドワーフのおっさんが活躍する正統派冒険ファンタジーである。シビア・シリアス・ギャグ……バランスよく配置されたストーリー。ハックアンドスラッシュ。硬派。30代以上の方なら、身に刺さる事を概ね保証します！若い方も是非ともどうぞ！

今どき創作ですら滅多に見ないような頑固親父然としたおっさんドワーフの、不格好でそれ故に格好いい物語。主人公に華がない分は、補って余りあるほど華やかなパーティメンバーが彩ってくれるので安心して下さい。特にこう、黒髪ボブカットの2m近い高身長無口筋肉美女とか。最高かよ。 一人ひとりのキャラの見せ場を描くのが上手。強キャラとして出てきた冒険者が本当に強キャラで、しかも本当に気持ちがいい奴ら。それぞれの持ってるアイテムや特技をしっかり使いこなして、それを作戦として運用している様はワクワクする。この作者の描く総力戦は本当に面白い。 敵もみな魅力的で、武人然とした気持ちの良い漢からいやらしい奴、どこか憎めないやつ、ムカつくやつ、物悲しいやつ、みんなキャラが立っている。そして恐ろしい敵との戦闘の圧倒的な絶望感。本当に容赦がなく、鬼気迫るものがあります。 是非、読んでみてください。

主役は、ドワーフのおっさんです。正直、格好良くないし、暑苦しいし、考え無しだし、おっさんだし……でも、おっさんには曲がらない信念があります。自分の世界の危機なのに異世界からの勇者に任せ、亜人には目もくれない王族に、怒りを爆発させます。ワシが世界を救ってやる！おっさんが信念の下に走り出しますが、どうやっての部分が完全に欠落しています。後先を考えない行動に、長年の友人である美形のエルフを筆頭に、周囲の人々が巻き込まれていきますが、信念のおっさんは止まりません。そして、読み進めて行くうちに、不思議とおっさんが格好良く見えてきます。世間の柵に縛られて、信念を曲げそうになっている貴方！たまには、ダー・ヤーケンウッフのように生きてみませんか？