評価:★★★★☆ 4.3
かつて『冬枯れの魔女』として畏れられた魔女は、その力を人を傷つける目的で行使しないと決め、一人の少女に戻った。名をフェル・ヴェルヌと改めた彼女は『トゥール・ヴェルヌ航空会社』の見習い航法士として、ベテラン操縦士のユベール・ラ=トゥールと空を飛ぶ。
魔女のホウキではなく、飛行機に乗って。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
完結日:2019年5月5日
作者:天見ひつじ
ロマンあふれる要素がたっぷり詰まってる作品。キーワードを見てビビっと来たらぜひぜひどうぞ。連作中編スタイルで、1章ごとに舞台となる国と状況が違います。高知の草原で遺跡を探し、砂漠の宮殿に招かれ、雪の積もる都市を訪ねる……メリハリがあってテンポ良し。飛行機についての描写も細かく、作者さまの「飛行機愛」が伝わってくるのもグッと来ます。確かにプロペラ飛行機って素敵。そして、ヒロインが魅力的! あまりに魅力が多すぎて紹介しきれませんが……序盤から作者さまの天才的アイディアに驚かされるのに、後半に進むにつれて精神的な成長と変化を遂げ魅力がさらに加速! 個人的にはweb小説だけでなく商業作品まで含めてもトップクラスに好きな女性キャラクター。設定と書き方がセンス抜群な作品です。
■非戦闘機乗りの「お仕事物」 この作品は飛行機乗りが主人公だが、その仕事は戦闘ではない。 戦場に麦酒を空輸、要人輸送、飛行機乗りの知識も活かした遺跡調査貢献、気のいい兄ちゃんの接待、荒れ地を緑豊かな地に戻すための調査など、航空戦とは殆ど無縁の飛行機乗りの話。いわゆるお仕事物だ。■胸躍る会社の成長「飛行機無き航空会社」へ 鮮烈な派手さは無いが、淡々と進むわけではない。 「国防を担う魔女」「会社の成長」といったワクワクする要素にも触れられている。■更新はスローペース 正直、更新速度は遅いが、各章をまとめて投稿されているので中途半端にお預けを食らう事はない。 飛行機知識に関する描写も丁寧ながら、マニアック過ぎず読みやすいものなので、季刊の短編小説のように楽しみつつ、合間に同作者様が完結させている20作近い作品群を読む事をオススメしたい。
ベテラン操縦士の男と貴種の少女の二人を主軸にした航空×ハイファンタジー小説:『空飛ぶ魔女の航空会社』。まず本作品は、清冽に過ぎるほどに透明なタッチで綴られる文章が、どこまでも美しい。真の美文とは、単なる比喩法やレトリックを凝らしたものではないということを実感させてくれる。すなわち書き手の繊細な感性が文の輝きを生む、ということを。WWIIの情勢や、実在の地理・文化をモチーフにした独自世界が舞台である本作だが、既に長編の架空戦記・ヒストリカルを手掛けた作者様であるがゆえに、随所においてその辣腕ぶりが光る。特に戦争の構造的背景とその移行の様子、さらには航空機の描写が実に丁寧で、素晴らしい。どちらにおいても該博と称賛すべき、その知識と作り込みの密度である。文字数が圧倒的に足りないが、この作品の魅力はまだまだ語りつくせていない。どうか是非とも一読をお薦めしたい。