女子高生が年下の恋人にヌードを描いてもらう話

少女が彼氏に、放課後の教室でヌードデッサンをしてもらう……という、ともすればセクシャルな作品になりそうな題材の短編だが、まずは騙されたと思って一読してほしい。『タイタニック』の一シーンのように、最愛の彼に自分のヌードを描いてもらいたいという、一風変わった――だが、彼女にとっては真剣な願いを、戸惑いながらも真摯に引き受ける彼の誠実さに、清々しさと男らしさを感じる。デッサンシーンでは、描かれる主人公と描く彼氏との、一片の妥協のない『真剣勝負』が緻密な描写で彩られ、読者の胸も熱くなる。作品を読み終えた時――読者の胸の中を、爽やかで清々しい、青い春の風が吹き抜けている事だろう。

「私」と優太が織りなす、淡い青春の官能劇。「私」は子どものように純粋で、情熱的です。衝動に心突き動かされたとき、そのためならすべてを投げ打つ覚悟を持った、とても強い女性です。本作は、名作『タイタニック』でヒロインが主人公にヌードを描いてもらうシーンを観た「私」が、その光景をとてもロマンティックに感じ、自分も同じ体験をしてみたいという強い欲望を抱くところから始まります。もしも、女子高生のあなたが、同じ欲望を抱いてしまったなら。あなたは、いかようにして悲願を達成するでしょうか？ふ、と考えてみても、そのハードルは決して低くないことがわかります。あなたは「私」のように、愚直に欲望を追うことができるでしょうか。そして、その先にあるものは。２人の高校生の、淡い青春で、しかし燃え上がるような官能劇です。必見。

ピュアな劣情、とでも言うべきか。主人公の抱いた欲望が、ヌードデッサンを通して昇華される過程。その先にたどり着くもの。青春の一瞬が凝集してスケッチに刻まれる。文章がすごくきれいで情景が手にとるようにわかる。二人の関係性が素敵で、ひたすら純粋で、でも若者の劣情の色を帯びていて、切ない。この短さにまとまっているのも好き。ぜひ読んでほしい。ドキドキするよ。

主題がヌードを書く男子生徒とモデルになる女子生徒って、ちょっと前衛過ぎるだろうと思った。しかも1人称はモデルの方だし、R15指定ときた。でも折角見つけた小説なので取り敢えず読んでみる。3話構成の短編で、1話ごとにテーマがある(ネタバレ防止のため内容は割愛)。有名な映画のワンシーンに憧れる少女と、絵を描くことに対して複雑な感情を抱く少年のやり取りのひとつひとつが胸を小突くようで、読者に流し読みはさせない。「ヌード」は、書く側にとっては高等で高貴な行為であり、モデルの側にとっては自らの全てを画家に託すという(高校生という年代だからこそだろうか)それもまた特別でどこか崇高なことで、一見前衛的なテーマも「そのテーマでしか表現できない」ものを表現しようとした結果なのだろうと思った。年齢制限こそあれど、もっと多くの人に読んでもらいたい。というかこれを読んだ貴君は読んでくれ、頼む。