評価:★★★★☆ 4.3
吸血鬼はびこる蒸気の都。魔を狩る騎士団へ赴任してきたシスター・ロコは、街中で襲い来た吸血鬼を撃退する男と出逢う。
彼の名はジョン。ジョン・スミス。両腕を蒸気機関の義手に換え、その手を杭と成し魔を滅する凄腕で――「お前は俺に、命を救われたのだ。それなりの謝礼で以て応じて然るべきだろう」――人助けで金を要求する男である。
吸血鬼狩りスチームパンクアクション、開幕。
話数:全86話
ジャンル:エピック・ファンタジー 異能バトル
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
蒸気とスモッグと欲望が渦巻く街で、奇しくも彼らは巡り合った。義手の吸血鬼狩り、ジョン・スミス。誇るべき剣腕を失い、本当の名を棄てた男。麗しきシスター、ロコ・トァン。卓抜たる武術と、隠されし秘密を持つ少女。過去という呪いに縛られる騎士と、貴き信仰に生きる聖職者。復讐のための義手と、慈悲のための短剣。思想も矜持もなにもかもが違う、男と娘。それはあたかも嵌ることのない凹凸のようで。されど、彼らは己が己であるための想いは同じく。闘うための魂の熱量は等しくて。そして、胸に抱える誇りは共に、なによりも気高く燃えていて。秘剣とパイル・バンカー。ありうべからざる歯車が噛み合うとき、いかなるシナジーが生み出されるのか。赫々と輝きを放つそのマリア―ジュは、果たして蒸気都市の闇を穿つのか。『悔打ちのジョン・スミス』至妙にして豪壮なる筆致で綴られる熱きスチームパンク・アクションを、目撃せよ。
喪ったものは腕だけじゃなかった。 インバネスに身を包み、男はジョン・スミスと名乗る。 明らかな偽名、けれどそれは過去を捨てる為に必要な名前。 機械の重低音と排気ガス漂う街で、男は今日も戦う。 何と? 知れたこと、街に潜む吸血鬼と。 あるいは己の内面から今も噴き出す赤い血と。 これでもかと重ねられる心理描写が、キャラクタを浮き彫りにし。 息遣いさえ聞こえてきそうな戦闘場面が、私達の鼓動を速くする。 そうだ、この物語を読むには目だけでは足りない。 五感全てを使って読む必要がある。 そうでなければ、この物語を受け止めきれない。 この物語に浸り切れない。 見ろ、あの男を。 両の腕を喪っても、彼はまだ諦めていない。 体温通わぬ鋼鉄の義手がある。 蒸気あげる駆動鎧装の音は、終わらない復讐を告げる鐘の音だ。 それを聞かずには……眠れないに決まっているだろう。