評価:★★★☆☆ 3.4
貴族の旦那様は青年を引き止め、鋭い目線を向けながら仰った。
「お前は、歌の上手い娘に心当たりは無いか?」とーー旦那様は亡きお嬢様に似た『歌声の美しい女性』を探していた。青年は悪い予感がし、その屋敷で働き始める。そしてその2年後、ある女性は屋敷に連れてこられる。
その女性は、青年の良く知っている孤児院で一緒に暮らしていた人だった。
遠く離れ地で働いて孤児院を守るために、彼女に無茶な仕事をさせないために。そして、誰も好きにはならないと、距離を取るために彼女から去った、まさにその女性。青年は旦那様に買われて欲しくは無かったと、彼女の身を案じつつ戸惑いながらも、5年ぶりの再会を果たす。長年、両親の事を許せずに生きてきた青年は、人目を盗みながら彼女と逢瀬をし、やがて両親と同じ立場に立つことになった。
※完結はしたものの現在、工事中※
1話~ …本編 約10万字
…後日談
…設定や裏話
話数:全45話
ジャンル:
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
★こう言う『美しい作品』を書ける人がまだ居るのかと心から敬服した★歴史小説、おそらく馴染みの無い方の方が多いだろう。現実存在した過去の様々な年代の地域を舞台とした物語創作をすると言う物だ。実在の人物を追ったり過去の実在世界に架空の登場人物を描く★だが書こうとして書けるジャンルではない。実在する世界であるが故に正確かつ詳細なデータが必要のみならず、当時の人間たちの風俗・習慣、そして価値観や心性に至るまで正確に作者が把握している必要があるのだ★舞台は19世紀の英国、ある貴族が奥方のために歌姫を探す所から物語は始まる。そして見つけられた歌姫は、その屋敷に奉公している青年フロンにとって避け得ない運命を負った人だった★単なる恋愛譚に陥らず、英国社会特有の身分階級と言う〝壁〟に正面から挑んだ意欲作。身分の違いと転落劇がもたらす悲劇の前に膝を屈せず誇りを持って生きる主人公の生き様が光る逸品である
とても優しい雰囲気の恋愛小説です。舞台は十九世紀の英国。それだけで素敵な雰囲気ですが、とある理由で過剰なまでの堅さを持ってしまった主人公と、どこまでも真っ直ぐで曇りのないヒロイン…そんな二人の小さな恋を綴った作品です。そして、その恋が燃え上がったとしても、無理ゲーそうなのが余計に読者感情を切なくさせるのですね…。昨今の、すぐに性交するような恋愛小説のアンチテーゼと言いましょうか。人を愛することとは何か、家族を作るということは何なのか…そんな深く重めな副題が含まれていながらも、綺麗な世界観が保たれています。追求された耽美というよりは、汚されていない水のような、天然の美しさですね。女性だけではなく、男性にもぜひ読んでいただきたいです。癖のない優しめの文章なので、老若男女楽しめる上に、感動できる作品ですよ。