評価:★★★★☆ 3.9
「なあ、あたしら、姉弟にならないか」そう言った夜の片隅で、ふたりの幼い奴隷は姉弟となった。人から家畜に成り下がり、外れない首輪を巻いたナツとシノは、小さな手を繋ぎ合い、命を求めて逃亡を企てる。男勝りな少女と、言葉を話せない少年。傷つき、奪われ、自由を求め裸足で駆け、そうして、ふたりが最後に見つけた美しいもの。涙が溢れるほどに煌く輝き。幸福を求め歩き続ける彼らの道程を、ここに語る。
話数:全35話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
まさにヒューマンドラマと言える作品。『小説とはこうあるべきだ』と体現されたような感覚を覚えました。物語は喋れない少年『シノ』と、男性口調の少女『ナツ』が、ある日姉弟となるというシーンから始まります。2人は奴隷で旦那様/主人に殺される恐れがある事から、火事の混乱に乗じて逃げ出すが、数多もの試練が待ち構えていたというお話。丁寧で、しっかりと情景を表現した文章は、臨場感があり、非常にイメージしやすくなっております。重く、心に響くような展開は、考えさせられる面が多く、予想を裏切るような話が続きます。共に想い合い、支え合い、生きていく様子は、彼らの幸せを願わずにはいられなくなるでしょう。是非読み進めて欲しいと、心から思える作品です。感動すること間違いなし。
本作は、言葉をしゃべれない少年と、少女。二人の奴隷の逃避行を描いた作品。始まりからとてつもないほど重く、目を背けたくなるほど痛々しい。しかし、そんな状況だからこそ二人の奴隷の間に生まれた絆が唯一無二ものとして描き出されている。描写は丹念で、表現は豊か。舞台設定も細かく、何よりも重苦しい。故に、幕を開ける二人の逃避行がより読者の心を揺さぶるシーンとなるのだろう。少年はしゃべれず、少女も特別な力など持っていない。非力な二人を待ち受ける脅威は、想像し得ない程厳しいものになるだろう。物語はまだ始まったばかり。今読み始めるからこそ、この物語により深く感情移入できるのではないだろうか。是非ご一読を!