評価:★★★★☆ 4.3
酒は飲んでも飲まれちゃいけねえ。
江渡城下の岡場所で使いっ走り兼用心棒をしている平蔵は、酒に酔った帰り道めっぽう美しい一振りの刀を手に入れた。
金になりそうだと長屋に持ち帰った翌朝、玉のように美しい女が平蔵の前に三つ指をついていた。「ふつつかものですが、よろしくおねがいいたします」
……ただし、童女だったが。
拾った刀には、ご神木で造られた特別な鞘を依り代とする神、鞘神(さやがみ)が宿っていたのだ。
質屋に売られようと刀をかついで平蔵のもとへと舞い戻ってくる童女、さや。仕方なくほっとくことにした平蔵は、次から次へと魍魎はびこる怪事件に巻き込まれてゆくのだった。
だめおっさんと人外幼女がおりなす痛快アクション時代劇。※カクヨム、ツギクル、セルバンテス、アルファポリスにも投稿しております。
話数:全32話
ジャンル:
時代:江戸
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
江戸時代(江渡時代)、遊び人として燻っていた平蔵が、一振りの刀と出会ったことから物語が始まる。その刀には童女がついていて、「おれのかたな」と言って自らを使ってくれる平蔵になついてしまい…この時代、異界から人に乗り移り異形と化す虚神(うろがみ)が暴威を成しており、その刀は虚神をも斬れる鞘神(さやがみ)で!?鞘神(童女)を手に入れてしまった平蔵と、虚神狩りの名家の少女、そして矜恃と欲望と虚神に取り憑かれた人々。時代の食物や風俗や社会なども交えつつ、確かな筆致で本格派時代劇が展開されます。彼らの戦いと謎解き、そして、平蔵が自分の望みを取り戻し、童女が幸せな居場所を得てゆく。痛みもあるけど、それ以上にユーモアもアクションも優しさもあって、皆が幸せになって行く未来を感じさせてくれる。そんな素敵な物語です。小説家になろうという場所は奥が深いな、と改めて感じる作品。お勧めです!
寂しい、悔しい、悲しい、ずるい。誰もが一度は、いや、常に抱え続けている感情だろう。時は昔、場所は江戸……ならぬ江渡城下。人の負の感情につけ込んで虚(うろ)を広げる魍魎に対し、唯一の対抗手段を持つ虚斬りが、英雄として崇められる。これはそんな世界の片隅で起きた、一人の男と神の幼女との、出会いと始まりの物語である。主人公の平蔵は、決して善良な人間ではない。金はあるだけ酒と消え、一日暮れればそれで良し。怠惰な生活を送っていた彼に転機が訪れたのは、とある刀を拾ってしまった日のことだった……人は誰でも、醜い心を持ってしまう時がある。些細な傷も、恨み、妬みが積み重なるうち、手に負えなくなることもある。生きる私達は誰だって「虚神憑き」になり得るし、同時に「虚斬り」にもなれるのだ。平蔵の刃は、それを如実に教えてくれる。時代物・和風ファンタジー好き必見の、痛快アクション物語――ここに見参!
日常に倦怠感、先行きに興味無し、そして過去には拭い難い傷。 この物語の主人公はそのような男だ。 その日暮らしを良しとし、明日のことは考えない。 刀は使えるけれども、士分にはあらず。 それでいいと思っていた。 それで十分と思っていた。 けれども、運命の悪戯は一つの出会いを彼に授けた。 少女の名はさや、と言った。 一人ぼっちの鞘神。 主無き刀に憑く神は、小さな手を男に伸ばす。 その手を払うのは簡単だった。 けれども何故か出来なかった。 男と少女は架空の江戸を駆け抜ける。 刃には迷い無く、眼差しには悪を映し。 そして心にはもどかしい優しさを抱いたまま。 ライトノベル版時代劇、ここに開幕。