評価:★★★★☆ 4.1
凄腕の詐欺師だったツカサは、ヤクザの金を狙った末に追われる身になった。さんざん逃げ回って金が尽きた頃、崖に追い詰められて海に飛び込む。そして流れ着いた先は、なんと異世界だった。
日本での失敗と後悔を胸に、流れ着いた先で新しい生活を始める。居候先は、すぐにでも潰れそうな小さな商店。その店を立て直すべく、詐欺師の経験や技術を使って商人になる。
時には真っ当な営業技術を使って物を売り、時には詐欺師の技術を使って他人を説得する。そして居候先の商店を乗っ取り、店を繁盛させるために奮闘するのだった。
目指すは世界一の大商人。真面目に働く紳士な詐欺師は、異世界の大商人に太刀打ちできるのか。元詐欺師による異世界ビジネスコメディが、今始まる……。
話数:全219話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
異世界転生(転移)ものは数あれど、詐欺師が主人公の作品は他に無いでしょう。また、詐欺師という題材は小説との相性が良いということに本作で気付きました。本作は巧みな話術や的確な商売術(詐術)がしっかりと描かれているので、アクションではなく言葉の掛け合いを楽しむことができます。これは小説というコンテンツによくマッチした作品であると感じました。是非一読してみることをお勧めします。一話だけのつもりが、主人公に乗せられていつの間にか先へ先へと読み進めていることでしょう。
” 前世で詐欺師をやっていた迷い人ことツカサはこれまでの経験を生かして、居候をさせてもらっている店の手伝いをする事になる。 しかし、これまで通り詐欺をするのでは意味がない。金が増えてもその後は逃亡生活の始まりだ。居候先にも迷惑がかかる。 ならどうする?それは簡単。損させなければいい。そう、Win Winなら詐欺ではない!かつての巧みな話術で誘導しつつ、客に商品の価値を知ってもらう。まさに正攻法。ちょっとこちらのパイが大きい気がするが、気の所為だぞ。 “”詐欺的””などと題されているが、むしろ作風は王道の商人モノ。推した商品ではなく、利率の低い商材ばかりが売れてしまったり、大型店舗の情勢に左右されたりと、ある種のリアリティある展開がクセになる。 登場人物も全てが曲者。明らかな端役というモノがほとんど存在せず、全てが密接に絡まり先が読めない世界を構築している。”
このたび、異世界生活を始めた者の前歴は詐欺師。そんなわけで、もちろん偽名。保護してくれたウォルター商店を助けるために、繰り出される知識は、彼が日本で蓄えた塀の向こう側に落ちる一歩手前のものが多くなるかと思いきや……さすが異世界。前歴の経験がものを言う前に、まずは商店の建て直しから始めなくてはならなかった?日本では常識的な商売のあれこれを、ウォルター商店で一から導入。主人公の苦労は終わらない。次から次へと主人公の前に立ちはだかる、店主の無理解、チンピラ、元気な老人、そして主人公と同じく日本からの“迷い人”それらに対抗する主人公の姿を、しっかりと描き出す、作者の知識量も見事。さあ詐欺的手段を封印した主人公はが繰り出す次の一手は?乞うご期待!