評価:★★★★☆ 4
バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。
それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。
ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――!
天下無敵の色事師ジャスミン。
新米神官パーム。
傭兵ヒース。
ダリア傭兵団団長シュダ。
銀の死神ゼラ。
復讐者アザレア。
…………様々な人物が、徐々に絡まり、収束する……
壮大(?)なハイファンタジー!お気に召しましたら、是非とも評価・ブックマークなどを宜しくお願い致します!
*プロローグ1の美麗な表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます!
・2019年4月7日、ツギクルで外部登録を開始しました。
話数:全175話
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
初っ端から女を誑かして、ヤバい状態に巻き込まれてしまう主人公。その飄々とした女たらしぶりが最高! 個性豊かなキャラクターたちに、すぐ魅了されてしまいます。またよく作り込まれた世界観にも惚れました。文章も読みやすくて、作品の世界観に一瞬で引き込まれました。そしてこの主人公、ナンパ師なだけあって、口がやっぱり上手い。巧みな言い回しとハッタリで窮地を乗り越えていく様は目を見張るものがあります!
主人公ジャスミンは口八丁手八丁をお得意とするスチャラカなイケメン。作戦は教えてくれないし、フタを開けば結構行き当たりバッタリだし、ホッとすれば酒と泪と男と女の色恋沙汰でひと騒動……本作は、色んな意味でドキドキさせられ続けてしまう、だけどそこが魅力的な勇者(?)の冒険譚です。悲しいかなその相棒にされてしまうのは堅物な新人神官のパームくん。※完全に人選ミス他にもワケ有り美女に、豪快すぎる傭兵、やたら強いジジイと王道だけど振り切ったキャラが脇を固めます。ほら、もうタダじゃ済まない気配がするでしょ。175部の長旅となりますが、物語は堅実に構築されており、軽快なトークと緩急のついた展開で場面の鮮やかさを失わぬままエンディングまで誘ってくれるでしょう。剣と魔法のファンタジー世界という王道の材料を「色事師ジャスミン」というスパイスでピリリと味付けした本作、ぜひ味わってみてください。
物語は人妻と情事中の主人公【ジャスミン】が、その旦那に現場を踏み込まれ、追いかけ回されるというなかなか独特なシーンから始まります。人に重点を置いた作品です。登場人物の1人1人がしっかりした考えや行動を取ります。さながら、血の通った生きた人間のようです。個性溢れるキャラクター達それぞれに見せ場があり、目まぐるしく変わる戦況は必見です。敵キャラにも魅力があり、印象深いキャラクター性をしています。文章も読みやすく、1文が適度な長さであるために、目を通しやすいです。各章の話数も適度で、それぞれに見どころがある為、満足感があります。ユーモア、シリアス、バトルのそれぞれのバランスが良く、読み進めやすくなっております。完結したからこそ、安心して読み進めて欲しい。ラストも爽快に、後味良く、色事師らしく終わります。
皆さんは、ハイ・ファンタジーの楽しみ方は何がありますか?私にとっては「知らない世界を、冒険して旅する面白さ」が大きな魅力の一つです。その中でも一緒に旅する仲間に、楽しい奴がいるかいないかは重要な点です。そんな楽しい奴、異彩の魅力を放つのが、この小説の主人公・ジャスミンです。彼は希代の色事師。常識ではあり得ないモテっぷりです。そして自分の欲望に忠実すぎるくらい忠実、時にはあざといくらい(笑)彼の軽快なトークとユーモア、あらゆる難局を吹き飛ばす機転と行動力。読んでいて胸がワクワクする、「これぞ冒険ファンタジー」って感じです。だけどそれだけじゃありません。実はこのジャスミン、意外に男気のある熱い男だと感じました。他にも様々な点でユーモアのある登場人物、そして怪しい魅力のある女性キャラ。この小説を読めば、そんな彼と一緒に様々な冒険を楽しめるでしょう。
── それは単なる詭弁、もしくは妄想。「色事師」ジャスミン。浮世を流す伊達男。落とした女は数知れず。夢は大きく千人斬り。だが、自らの仕事の失敗により、修羅場に遭遇。濃密な男女の空間が一気に戦場へと変わる。時を同じくして彼の国に迫る脅威。絡み合う思惑。否応無くジャスミンの修羅場は本当の意味での戦場となる。個性的なキャラクター達と次々に起こるトラブル。 ── いつしかその中心は全て彼へと収束されていく。「英雄」とは? 「勇者」とは?真実とは下手な喜劇よりも喜劇である。在り得ない事がより信憑性を生む。 ── つまりは詭弁や妄想は切っ掛けさえあれば真実となる。「英雄色を好む、故に色を好むは英雄也」この作品を読めば、その意味が分かるだろう。
主人公ジャスミンは色事師として、徹頭徹尾軽いノリを崩さないキャラクター性を維持して周囲を引っ掻き回します。 一方で権威ある国家と、超絶的な力の持ち主を擁する無法な山賊団のシリアスな争乱との温度差が、物語においては緩急・アクセントとして機能しているのが非常に印象強く残りました。 それでいてジャスミンもまた軽薄だけで終わるキャラではなく、いざという時には口八丁と奇策巧妙の類で切り抜けていく様を見せつけてくれます。 このため、非常に憎めない印象を読み手に与えると同時に、『彼ならこの先の苦難も何かしてくれるだろう』という続きを読ませたくなるような期待感を同時に印象づけていくのがこの作品の『妙』だと思いました。
この物語を一読した時、不覚にも私は、プロの作家が気まぐれにアップしたものかもと思った。……いや、実際作者の正体を知らない為、当たっているのかもしれないが、兎に角商業誌レベルの作品であることは間違いない。女好きが過ぎる主人公に、好々爺のふりした?抜け目のない爺様。不気味な白貌の傭兵に、銀の死神。プロローグの段階ですら、このような魅力的なキャラクターに溢れている。一味変わった、それでいて良質なファンタジーを求める方に、是非オススメしたい。
女好きでだらしないけど、締めるところはきっちり締めて、キメるときはバッチリキメる。どんな時もウィットの効いたユーモアを忘れない。そんな正統派プレイボーイ系主人公ジャスミン。人を喰ったような見事な駆け引き術で、なんだかんだと窮地を切り抜けていく。そんな彼を始めとした味方サイドのキャラクターもさることながら、とにかくこの小説でグッと来たのが敵サイドのキャラクターの格好良さだ。道化師の格好をし、慇懃無礼な態度で敵の心までも折ってくるシュダ。黒い霧を纏うローブ姿の死神で、絶世の美女でもあるゼラ。彼らの悪の魅力。圧倒的な存在感が、物語に彩りを与えており、世界の魅力をいや増しているように感じた。古今東西、いろんな物語があると思うが、悪が魅力的な作品ほど、痛烈に記憶に残るものになっていると思う。
小説の中で大切な事は何か。設定?舞台?文章力?構成?確かに誰も正解だろう。必要なことに間違いはない。だが、私が最も大切だと感じている事は登場人物である。登場人物の魅力で、小説の良さの大半が決まるのだ。この小説の主人公、とても良い。器用に生きてる様で嘘がつけず、欲望に忠実。この主人公に何が起ころうと、読者は楽しんで見ていられるだろう。共感もできるだろう。それだけ入り込めるキャラクターになっている。一緒に、物語を味わえることだろう。
本作は、自称「天下無敵の色事師」な主人公を始めとする、多彩なキャラクターたちが織り成す、正統派ファンタジー。作品の中に作り出される空気感は実に見事なもので、色事師の軽薄かつ軽妙なノリの良さを筆頭に、キャラクターひとりひとりが余すことなく物語を構成していく。地の文も丁寧でありながら、説明がくどかったり文章が固いこともなく、ストーリーの進むテンポもちょうど良い。先へ先へと読ませる力のある文章だった。そして、軽快なだけが取り柄ではない。色事師のコメディ感溢れる調子から、一転して傭兵団側のシリアスな場面へ。展開していくストーリーの緩急の付け方は絶妙で、どんどん作品の世界観に没入できることだろう。是非、ご一読を。