評価:★★★★☆ 4.4
東南アジアの小国・ヴェイラの首都の古アパートで、隠遁者のような生活を送るヒゲの男、ジェイル(32)。彼こそ、15年前にわずか17歳で退位した最後の国王だった。
正体を隠しながら静かに暮らす彼のもとへ、突然日本人の女子大生チセが押しかけてくる。ジャーナリスト志望のチセは、ジェイルを取材したいと言ってきて!?
パワフルで自由なチセに振り回されながら、ジェイルは諦めていた人生を少しずつ取り戻していく。だが背後では、彼を政変に巻き込もうとする不穏な動きが……。やさぐれナイーブ男子×破天荒ゆとり女子(年の差)。恋愛ありクーデターありの、夏が舞台のドタバタエンターテインメントです。
※本編完結済み。現在は番外編を投稿しています
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
この物語の舞台となるヴェイラは、アジアの小国という設定があるだけの架空の国である。けれど一読後、賑わう街の雑踏を踏みしめたくなるし、主人公が食べられなかった屋台の料理を頬張りたくなるし、ガイドブックを片手に王宮に出かけ、クジャクのレリーフをそっとずらして秘密の抜け道を覗き込みたくなる。そんな味わい深い魅力が、この世界にはある。最後の王となった少年は15年後、クーデターに利用されそうになり懊悩し迷走する。「王様に一番大切なものは何だと思う?」老女の言葉が胸を刺し、彼に会いに来た少女は生き生きと街を駆け抜ける。鮮やかな情景描写と魅力的なキャラ描写は小気味よい疾走感を伴って我々読者を引きずり込み、意外な展開を経て、やがて彼らを爽快なラストへと至らせるのだ。ファンタジーであり、スリルとサスペンスに満ち、ロマンスと異国情緒に溢れた、ジャンルを問わずお勧めしたい痛快エンタメ小説である。