評価:★★★★☆ 4.4
※完結済み
※カクヨムにも投稿しましたレックスは百万回転生した転生者である。
これまで厳しい世界ばかりを生き抜いてきた彼は、今度の世界もそうに違いないだろうと思いこんでいた。だからいくら褒められても油断せず、今度こそ天寿をまっとうするために、いつ現れるかもわからない『敵』に備え続ける。
だが、ここは本当に平和な世界で、『敵』なんかおらず、レックスは本当に天才だった。
周囲が彼の力を褒め、彼をかわいがるが、彼はそれに『裏』があるものだと思い続ける。
これはあまりにも不遇慣れした彼が、幸せを受け止めきれない物語。
話数:全164話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:ご都合主義
注意:全年齢対象
なんだこれ?なんでなろうを読んでこんな気持ちになるのよ。はじめはクスクス笑ったり、吹き出したりしてたのよ。中盤から考えさせられる事ばかりだった。共感が止まらない。終盤は目が湿ってきたな。来た道と行く道の中間くらいの年齢でしょうか、作者さんは。良い。これは良いし面白かった作品でした。映画化やドラマ化しても良いと思います。読ませてくれてありがとう。
渋い、渋すぎる。面白おかしくギャグ満載かと思えば、段々笑えなくなってきて、最後に何とも言えない感慨を覚える。成る程、文学か。良くある、俺ツエーとか、俗に言われるなろう系の化けの皮を被った文学作品、それがコイツの正体だ。最近の流行りの逆を行き、此処まで書き切ったことに敬意を表し、このレビューを残します。控えめに言って最高でした。
人一人の人生を始めから終わりまで書いた小説。派手な話ではない。だが、主人公や登場人物の自分の年齢が近ければ共感し。過去であれば昔に思い出を馳せ。未来には期待を持って読むことが出来る作品。年齢が変わる毎に読み直せば、新たな思いが湧き出る素敵な作品であり、いくら読んでも飽きない作品である。正直になろう小説としてここにあるのが、勿体無いぐらいの小説である。
物語は普通、人生や歴史を一部切り取り、クライマックスを魅せるもの。主人公の老死まで書くことはあっても、大体は間を飛ばしてエピローグ形式にしかならない。しかし、普通の人生はクライマックスなんかない。生まれてから死ぬまで、山あり谷あれど、一部だけを切り取るなんてありえない。それを中弛みさせず、世代に分けて雰囲気も変わっていく作りは見事の一言。俺自身の三十年余の人生を振り返っても、ああ面白いことはいっぱいあったなという気持ちになった。稲荷竜作品だけあってやはり異色だが、所謂「日常系」を突き詰めた今作品をぜひ読んでみてください。
“何を見させられてるのか、分からなかった。ハーレム、俺TUEEEEとかそんなのを読むつもりで開いた作品がこれ、俺が求めていたものはなかった。いつまで経っても始まらなかった。ただ、淡々と話が進んでいく中で、選択してその選択肢があってたのか考えて色んな未来を想像して友が出来て、喧嘩して、笑って、物語のようなプロポーズもせずになあなあで結婚して、正直これって物語?なんて思った。結論から言おう、物語だった。別れを惜しんで、出会いに笑って。目標は達成出来なくて、気がついたら望んだ道とは別の場所に立っていて、それでも前に進んだ物語だった。不器用な主人公の””人生””というの名の物語。この作品を読んで、一息着いて、このレビューを書き終わったら、俺も自分の人生を生きてみようかなと思います。自分の人生は自分が主人公ってありふれた言葉が実感出来た作品でした。”
百万回転生しすべてがロクでもない一生だった主人公の百万一回目の一生は普通の人生でした。主人公は百万回ロクでもない生を送っているため疑心暗鬼になり、いつ唐突な不条理に巻き込まれ死んでしまうのかと常に考えているが、今世は魔法も獣人もあるものの読者である我々の生きている現代とほぼ変わらない平和な世界、そんな中で生きていく主人公の一人称考えすぎコメディ物語は赤ん坊から始まり、主人公の成長に合わせて幼馴染、悪友、ライバル、同志?など多くの人々と出会い結婚し子供が生まれその子供が結婚し晩年を迎え近しい人々を喪っていく大事件などが起きるわけでもない普通の一生です。しかし普段の話にクスっとさせられながら主人公に感情移入してゆくことで子供の結婚で切なさを感じ、親について考えさせられ、友人たちを喪っていくことに悲しみを感じさせられる素敵な作品。これから読まれる方にも是非この感情を共有して欲しい。
百万回の転生が主人公レックスに与えたものは、用意周到さだった。物語の初めの若い時期は勘違いコメディ。中年期は、一定のおかしみを感じさせる。そして今老年期を迎え、もうすぐレックスが煙になろうとしている。連載の終了と主人公の死が重なり合って、深い寂寥感を生み出している。今すぐに読んで、もうすぐいなくなる主人公を惜しんで欲しい。素晴らしい作品だ。
その世界に生まれ落ちた瞬間から始まった、世界に潜む「敵」との戦いを通じて主人公の成長が描かれる。少年時代から丁寧に描かれる大切な友人、ライバル、愛する者達との出会い。そして、やがて訪れる友人や家族との別れを乗り越えながら、レックスはそれでも生きて行く。すべては「幸せな人生」をおくり、天寿を全うするために。
ずっと苦難の生を強いられながら転生を繰り返してきた(と言い張る)主人公は平均寿命80年の世界で90年以上生きなければ大往生とは認めないという高すぎる目標に邁進しながら幸せな挫折に見舞われつつ私たちの住む現実世界を裏側解釈でぶった切る小説です。粗筋と異なり全く暗さを感じさせない捻くれ解釈でズレまくった努力を重ねるぽんこつレックス君の物語をお楽しみあれ。
主人公に伝えたい。あなたの生まれる世界は平和だと。素敵な出会いが待っているだろうと。でも彼には決して伝わらない。厳しい世界ばかりを百万回も転生してきたのだ。今回は違うと思うわけがない。だから彼は決して油断しない。産声を上げるより速く、警戒度をMAXにするだろう。平和なのになぁ……。――あれ!? 平和なら何も問題ないんじゃ……?彼の願いは天寿をまっとうすること――トラックに気を付ければ多分いける。警戒しっぱなしだけど――むしろ警戒を解いたら、いよいよヤバイ。限界かもね!幸せ耐性が皆無なのは心配だ。いい感じのイベントも曲解するだろう――不憫だ。安心してママに甘えていいんだよ。友達とたくさん遊んでいいんだよ。恋だってしていいんだよ。……どうか届いてほしい。――時間だ。平和な世界に、臨戦態勢を敷いた歴戦の赤ん坊が誕生する。彼に幸あれ!