光輝と早苗が海外の新婚旅行から帰ってみると、小学校時代の学友である仁から結婚祝いが届いていた。三人は同級生だ。さっそくお礼の電話をして一○年ぶりの再会を果たすことに。
仁は光輝の親友で、早苗の初恋の人でもある。しかし四年生のとき、家族旅行で交通事故に遭った。仁だけは生き残ったが大怪我を負った。再会はそのとき以来である。
福岡駅にはリムジンが出迎え、二人を郊外の屋敷に運んだが、門を通過するとそこはアフリカ。最新のプロジェクションマッピングだと分かったが、出迎えた仁は小学四年生のときの姿だった。仁は成人した仁の死体を見せ、昨日電話で話したあとに自殺したと説明。自分は一○年前に仁のクローンとして生まれ、アバターとして生きてきたのだから、オリジナルが死んでも仁そのものは死んではいないと主張。
仁は二人を屋敷に案内した。出迎えたのは、伯父以外はすべて子供という奇妙な家族だ。伯父は医者で、交通事故で死んだ仁の両親や姉はもちろん、その後に病気で死んだ仁の祖父母、伯父自身の分身までもクローンで再生したため、仁の両親、姉は仁と同い年、仁の祖父母は仁よりも五歳年下という奇妙な家族構成となった。
伯父は彼らをアバターとしてつくり、初期化細胞と人工子宮を駆使して、体を千切って分身たちをつくり出すことのできる時代が到来したのだと胸を張った。家族も死の離別という悲しみから開放されたと持論を展開。
仁は仁で早苗にアタックを始め、見かねた仁の姉がアイデアを出した。早苗のクローンを作成して仁と結婚させようというもの。光輝夫婦は提案を拒否し退出しようと席を立ったが、仁の伯父は早苗の組織をいただこうと、猛獣たちに追いかけさせた。
二人は猛獣たちに取り囲まれた。光輝は早苗に、腕の一本くらい再生可能だからライオンに与えろと命じ、早苗は夫の冷たい言葉に愕然としながらもライオンの口に手を突っ込んだが、奥にフックがあったので引っ張ってみると、すべてのイルージョンが消えて、そこは荒れ果てた畑のど真ん中だった。
早苗は光輝に失望し、遠くに見えるピラミッドに向かって歩き始めた。そこにはストレッチャーに乗った成人の仁が眠っていた。早苗が仁の唇にキスをすると仁は目覚め、早苗を軽々と抱きかかえて、あぜ道で待っているリムジンに向かった。光輝は妻をまんまと横取りされてしまった。
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