評価:★★★☆☆ 2.9

 カダンジュ島。

 大陸から離れた南の孤島。

 多大なる難所と大海峡の先に、ようやく辿り着ける場所。

 深くて巨大な樹木が根差す大密林地帯。

 大陸には生息しない獰猛な獣や、特異な生物が横行する。

 ひ弱な昆虫や、物言わぬ植物でさえもが大いなる驚異となる。

 旧時代からの生存競争に勝ち抜き、進化し続けた数多の怪物どもが跋扈する。

 一方で、姿を変えずに現存し続けた幻獣。

 大自然の代弁者たる古の聖霊たち。

 弱肉強食こそが制約の、地獄の淵では、

 人間はあまりにも脆弱で、あまりにも矮小だ。

 強大なる捕食者がうごめく、密林の最奥。

 聖域と冠される地に、太古よりそびえる高い塔。

 世界に五つある内の一柱。

 曰く。

 天上の国を支える塔は、聖域に守られ、怪物たちに守られ、

 守護者と称される『竜の民』が守り続けてきた。

 侵入者は拒まずとも、帰還者は決して許容しない。

 一方通行の魔窟。

 狭量なる異界。

 そして、唯一無二なる天上への回廊。

 
 我こそは、と名乗りをあげ、塔へ挑んだ冒険者は数知れず。

 失われた命に、帰れる躯は残らない。

 されど、その地にも人は生きている。

 バドック。

 カダンジュに生きる若者。

 丘陵地帯に建てられた小さな里の、小さな道具屋の主人。

 彼は、島を訪れた冒険者と言う名の『夢追い人』に手を貸していた。

 冒険者たちの命が失われぬように力を尽くしていた。

 
 誰のためでもない。

 竜の民としての使命ですら関係ない。

 バドックの心の奥底に眠り、燻っているもの。

 彼が果たせなかった約束と決意のために。



登場人物
主人公属性
  • 未登録
職業・種族

時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

その他要素
注意:全年齢対象