くじらと、 完結日:2019年10月5日 作者:砂臥 環 評価:★★★★☆ 4.3大庭那智にはくじらという幼馴染みがいる。 高校三年、皆先の選択を迫られていた。 話数:全10話 ジャンル:ヒューマンドラマ 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 日常 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
青春とは何なのか?私は知りません。何故なら青春の青の字すら無い程に何も無かったから。何故青春が青い春なのかすら謎のままだ。しかし、そのヒントはこの話の中にある。むさ苦しいドドメ色の春を送った私の中に爽やかな何かが齎された。今更ながら学生時代に戻って青春したい気持ちになりました。青春っていいなぁ……。(´・ω・`)
青春というのが何故あんなにも眩しいのかということを考えた時に私が思ったのは、「不純物が混じっていないから」というものでした。何も混ざっていない純度100%の水は、太陽の光を通してとても眩しく輝きます。そして、それは青春にも言えることだと思うのです。大人になると良くも悪くも、人の心にはいろいろなものが混じります。それが悪いことだとは私は思いません。むしろいろんなものが混じるからこそ、視野は広がると思うからです。ですが本作のヒロインの那智は、純度100%の水です。そして本作のタイトルにもなっている、那智が想いを寄せるくじらという青年もまた、掴みどころのない水のような存在です。この二人がどんな結末を迎えるのか。高校生のあなたも、高校生だったあなたも、そしてこれから高校生になるあなたにも、是非見届けてほしいです。短いお話になっておりますので、秋の夜長のお供にお勧めです。
高校生。それは、誰にとっても不思議な時代だろう。もう子供ではない。しかし、大人でもない。曖昧で、思い切りが悪くて、小さなことにも悩んでしまう。好きか?好きではない。嫌いか?嫌いでもない。どうしたいか?まだはっきりとは、わからない。本編のヒロイン、那智は、今まさに、そうした青春の中にいる。好意を向けられれば、嫌いではないがゆえに、態度を決めかねる。好きな男の子への感情も、ゆらぎ、迷う。迷うのは苦しいものだ。つい無理やりにでも、分類し、整理し、解決したくなってしまう。しかし、彼女はそうしない。迷いは迷いのまま、悩みは悩みのまま。静かに己の中の渾沌を見つめるその眼差しに気づく時、私たちはピュアとは何だったのか、思い出すだろう。疲れた心に差し出される、一椀の冷たく澄んだ水のような小説。受け取るか否かは、あなた次第だ。