評価:★★★★☆ 3.9
魔物の帝国インダリアは、長らく人類との争いを続けていた。そんな中、今亡き先代魔王に代わって新魔王に就任した一人娘のエレナードは、退屈な日々を送っていた。
戦争って言っても、どこで何が起きているの?
箱入り娘のエレナードは、部下達の気遣いにより外界の情報を殆ど知らされず、人類との戦争は遠い地の出来事でしかなかった。
そんなある日、魔術師のエニセイがエレナードに一冊の書物を差し出す。
「これは異世界より転移させた書物を解読したものです」
そう告げたエニセイが取り出したのは、地球(アース)と呼ばれる異世界の軍人クラウゼヴィッツが記した『戦争論』と表される書物だった。
暇を持て余すエレナードは、『戦争論』を始めとした様々な書物を読みふけり、戦争のなんたるかを理解する。同時に、魔王軍が窮地に陥っていることを始めて理解した。
地球(アース)で培われた軍事知識を得て天才軍師となった魔王エレナードは、いかなる軍略を用いて人類に対抗するのか? いかにして魔物達の生存圏を確保するのか?
戦争と平和の本質をコミカルに描いた本格軍略作品がここに開幕!
話数:全76話
時代:中世
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
司馬遼太郎・著「坂の上の雲」において。満州軍総参謀長となった児玉源太郎について、印象的な描写がある。それは日露戦争開戦直後から、彼が心を砕いていたことだ。それは、「この(日露)戦争を如何にして、終わらせるか」であるということだった。つまり政略・戦略をそのテーマに掲げるのなら、肝心なことは戦争の描写よりも、その終わらせ方など大局的な視点がこの小説にはあるか?ここが肝心なところだと勝手に思っているが、「……あるな」と、思わず生唾を飲み込んでしまう周到さを見せるこの小説。そうなれば頭の中には大モルトケ、アウステルリッツ等、あれやこれやが頭の中に湧いてきて、ページを捲るってが止まりません。何だコイツ、鼻持ちならない奴がいるな!とお思いでしょう。実際、その通りですが大丈夫です。こんな鼻持ちならない奴でも、こう言うしかなほど本作は――面白い!!
タイトルに即したいい作品。あまり小説では見ない哲学論や戦術論を前面に押し出した珍しい作品。それでもって一貫したストーリー性があり、ちゃんと主人公の目的に沿って話が動いてる。非常にテンポよく話が進み、ストレスなく読めたのは非常に良かった。人の寄り付きにくいジャンルの話ではあるが、テンポよく進む上あとがきで作者さんが注釈を入れてくれているので、予備知識がなくとも楽しめる最近イチの作品だった。作者さん頑張って。陰ながらブクマも入れて応援しておきます。
元魔王だった父の跡を継ぎ、現魔王となった一人娘のエレナード。彼女は父親の計らいで箱入り娘として育てられたため、戦争とは無縁の生活を送っていた。だが、一向に終わらない人族との戦争に疑問を感じ、幹部の一人に問いただすと、何と現在、圧倒的力を持つ魔族は、圧倒的数を誇り戦略に長ける人族に劣勢を強いられているという。そこで、異世界=地球から「クラウゼヴィッツの戦争論」を入手した、と部下から聞き、それを元に戦略を立て直すエレナード。更に「孫子の兵法」までも獲得し使用するようになる。途端、魔族の快進撃が始まる。脳筋で力任せに攻めていた魔族が、戦略を用い戦争する事で劣勢から立ち直る。胡座をかいていた人族達は、突然強くなった魔族達に驚愕する。題名は難しそうですがとても読みやすく後書きに説明もあり、テンポも良くとても読みやすいです。久々に良作に出会えました。多くの方に読んで欲しい作品です