評価:★★★★☆ 4.3
暗くざわめく夜の森、主人公は送り狼の大上さんと出会う。
……あらすじと言われましても、特別書くようなことはありません。
毎夜主人公が森へと行き、妖怪の送り狼と歩きながらただ会話をするだけの作品です。いえいえ! なんの面白みも無いと思ったそこのあなた! この2人の会話を侮ることなかれ!
自然とニヤついてしまう圧倒的な会話劇が自慢です!
読んで良かったと思える作品だと、自信を持って宣伝します。9月21~9月30日の夜に毎日更新していました。
毎夜1話ずつ読んでいくと、長く面白く楽しめる作品となっております。
時代:現代
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
“舞台は現代日本だけど、人気の無い暗がりなどには当たり前のように妖怪が居る……そんな世界観。妖怪達は別に人間の為に存在する訳ではなく、皆それぞれの存在と矜持を持って、多くは人と関わりを持たず””生息””しているのですが……主人公(名前は出て来ません)の青年はどうも妖怪の目からは高級食材に見えるらしいという特異体質。他の人間達にとっては無害な妖怪達も、主人公にとってはそうではありません。そんな主人公を今まで守っていてくれたのは、亡き祖母(多分超強い)がくれたお守りだったのですが……美しい静寂に満ちた現代和風中編ファンタジーです、一気に読む事も出来ますが寝る前に一話ずつ読むのも素敵かもしれません。あなたも是非、気高くて怖くて可憐なオオカミさんに会いに行って下さい。”
主人公の青年はある日の帰り道、大きな石に躓き崖の上から落ちてしまう。幸いにも、擦り傷程度で済んだ彼は家に帰るために森の中を歩き始めた。僅かな月明かりだけが照らす森の中を、青年は数々の不気味な視線に晒されながらも進み、ある場所へとたどり着く。そこは古めかしい館。そしてそこで出会ったのは、美しい送り狼の女性、『大上さん』だった。この作品の見どころは、青年と大上さんの絶妙な距離感だろう。大上さんはミステリアスで魅力的な女性である。青年もそんな大上さんに対して好意的に接する。しかし彼女は送り狼。目の前で転べばたちまち襲われて食われてしまうのだ。心を許したいが、決して心を許してはいけない。そんな状況が恐ろしくも愛おしい、といった気持ちにさせてくれる。青年と美しい送り狼が繰り広げる帰り道の日常。是非、手にとって読んでみて欲しい。