評価:★★★★☆ 4.2
**PASH!ブックス様より「辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する」「〃 新婚編」発売中です**
田舎の農家の娘だったサリーシャは、その美貌から領主である伯爵家に養女として迎えられる。
王太子妃候補として厳しく躾けられたサリーシャだったが、結局、王太子のフィリップが選んだのは別の令嬢だった。さらに、婚約者発表の式典で賊に襲われた王太子と王太子妃候補エレナを庇い、背中に未婚の貴族令嬢として致命的な醜い傷を負う。
そんな失意の中、サリーシャにもたらされたのは六十歳過ぎの老人伯爵との結婚話。しかし、蓋を開けるとサリーシャは十歳年上の辺境伯、セシリオ=アハマスと結婚することになっていて……? 王道のヒストリカル風ラブロマンスの溺愛もの。
話数:全128話
ジャンル:異世界恋愛
時代:近世
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:ハッピーエンド
注意:R15
澄んだ優しい心と類稀な美貌を併せ持った少女サリーシャと、誠実で人を外見ではなく中身で判断する辺境伯セシリオ。二人はそれぞれ負い目を抱えている。――サリーシャは、背中に令嬢としては致命的な創痍が。そしてそれを黙している負い目が。――セシリオは、アハマスという女性には厳しい軍事環境を治める身としての負い目が。それらの負い目は、全て「周りの人間の行動や言動」が植え付けたものであって、二人が互いに話し合って生じた負い目ではない。そんなちょっとしたすれ違いを抱えながら、一歩……たった一歩が中々踏み出せずに婚姻を結ぶことになった、二人の純愛を綴った物語である。主役となるこの二人は、人間性が真っすぐで、個の芯が通っているので、とても感情移入がしやすく、応援をしたくなる人柄なので、是非――皆様もこの純愛物語の背中を後押ししてみてはいかがでしょうか?
小説を読んでいて、頭の中に映像を浮かべる方はいませんか?そんな時、ひとつの違和感で我に返ってしまうことはありませんか?この物語は、現実に戻ることを許してはくれません!まるで文章の間から魅了の魔法でもこっそり放っているのかと思わせるくらい繊細な表現力で、読み手をぐんぐんと引き込んでくれます。 王道の婚約破棄物ですが、しっかりとした設定と流れるような描写、そしてヒロインの令嬢としての立場やひとりの女性としての心情の動きなどは、心を引きつけて揺さぶります。さて、辛く悲しい状況に追い込まれたヒロインのもとに、逞しくも不器用そうなヒーローが現れました。でも、すんなりとハッピーエンドは迎えられそうにありません。物語は、まだまだ始まったばかりです。これから何が起こるのか、一緒に楽しみませんか?
この作品で特筆すべきは、やはり圧巻の文章力でしょう!さほどネット小説を読んだことのない私ですが、間違いなくこれはトップレベルなのでは⁉︎そして、その圧倒的な表現力で描かれるのは、中世ヨーロッパ風のロイヤルな世界観。写実的表現が権勢を振るった文化と、緻密な文体が見事にマッチしています!さらには、王道を往く令嬢のラブストーリー。身体に傷を負ってしまい、貴婦人としての未来を閉ざされてしまった主人公の前に現れるのは、男社会で生きてきた不器用な軍人……!この2人の対比も完璧で、その差から生まれるやりとりも身悶えするほど……尊い!(←語彙力の低下)いまだ10話と序盤ですが、すでに至高の良作であることが、読めばハッキリと分かることでしょう! ぜひご一読ください!
この物語は美しさを理由に政治の道具として伯爵の養子として迎えられた主人公から始まります。お相手になる殿下との出会いにも恵まれ、仲良くなるわけですが……政略的な理由で近づいた罪悪感や、相手の人柄の良さからどうしても一歩を引いてしまい、目的を達する事ができませんでした。人の良い殿下とお似合いの友人を何処か他人事の様に祝福している最中、そこに凶刃を持った賊が現れて二人を庇った主人公は……という惹きつけられる展開に加えて、何より筆者様の心情描写やストーリー構成が秀逸です!!物語の書き方の手本になる気もしますので、是非ご一読ください。