評価:★★★★☆ 3.9
「私が小岩井 節子さんに出会ったのは、全くの偶然だ」
小説書きが趣味の青年とその老女は、ある日偶然に出会った。
陽だまりのような笑顔の彼女に、青年の心は動かされ、彼の人生を大きく変えていく。彼女との”優しい時間”で得られるものを守るため。
彼は行動する。行動、してしまった。
そして、ただの日常は簡単に崩れ去る。
前後編完結の独白風・短編ヒューマンホラー小説。
あなたは彼の気持ち、わかりますか?
※ジャンル別日間ランキング(ホラー)2位を達成しました!ありがとうございます。
※2019.11. 7 後編のラストを一部加筆・改稿いたしました。
※PV2,000とpt300を超えました!応援ありがとうございます!
話数:全2話
ジャンル:ホラー
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:現代
舞台:未登録
その他要素
注意:全年齢対象
ひだまりのような気持ちで読んでいたら崖から突き落とされて落ちた先にはピラニア、それくらいの衝撃を受けました。登場人物や環境など素材はごく一般的なものなのに料理次第でここまでゾワゾワとした気持ちになるものかと感心しました。安易に幽霊を使ってホラーな話を描いてしまうより人間の狂気の方が数段こわいなと思いました。
最後に『私』が叫ぶシーンを読んだ瞬間、戦慄が駆け巡った。『私』にとって彼女の優しさは、暖かさは、むしろ逆に『私』の狂気に拍車をかける結果となったのです。なんとも皮肉なことでありましょうか。されど、はたから見たら狂気とも言えるこの小説も、『私』からすれば何の変哲も無い常識なのです。その常識が壊されるのを危惧して行動をとったのです。これは本当に小説の中に留まることでしょうか?この作品は現代社会に対する作者の皮肉だと感じます。誰もが自らの正しさを信じて疑わず、その正しさを他者にさえ求めようとする。この構図はまさに作中の『私』そのものでありましょう。その点でも二重に打ち震えた作品です!
短編で、文字数もそれほど多くありません。描写も丁寧ですぐに読むことができます。銘打ってある通り、確かにこれはホラーです。優しさの中に隠された人間の狂気が、優しい文章の中に織り交ぜられています。微笑ましい雰囲気で読んでいたはずなのに、後半になってその平和が瓦解していく瞬間に背筋が凍りつきました。ホラー小説なんてお化けでも出しておけばいいだろうとは思うだろうけど、人間の持つ狂気もまた恐ろしいものです。この小説で、それがよく理解できることでしょう。
“文字数は1万字以内、前編後編の2話編成。読みやすい分量で、しかも改行などの間隔も抜群。心理描写や情景描写もわかりやすく、読んでいるだけで風景が浮かんできました。とても高水準な小説です。そして、内容も絶品。どこからがホラーなのだろう?と思いながら読んでいると、最後でそうきたか!と思わされる展開でした。そして、””それ””に至る動機は純粋ながらも、純粋が故に些かの狂気を感じさせるところも〇。普段ホラーなどを読まない人におすすめしたいお話です。”
なんとも優しく、暖かく、そして物悲しい物語でした。様々な感情が入り交じって表現に困りますが、壮大なヒューマンドラマを観た気持ちです。主人公と節子さんのささやかな日常に少しずつ歪みが生まれて、新たな人物の普通の行動によって崩れ落ちる。その何気ない行為が、狂気を呼び起こすとも知らずに。人間の怖さを見た気がします。