キスより抱き締めて。〜恋愛短編集〜 完結日:2019年11月2日 作者:peco 評価:★★★★☆ 4私は、出会う前から彼が好き。 ※気まぐれ更新につき常に完結。 話数:全16話 ジャンル:恋愛 現実世界恋愛 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:平成昭和現代 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 日常 短編集 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
人を好きになる……。それは、とても素敵なことなのだろう。 だが、しかし、愛情を確かめ合う方法は、人の数だけ存在するのだ。『キスより抱き締めて』 なんと素敵な、恋心の想いが込められたタイトルなのだろう。 気恥ずかしさを隠す虚栄。殺めること叶わぬほどの激情。戦争終結後の再開……等々。 どのお話にも、劇的なドラマがある。純愛あり、悲恋あり。 しかし、短編と侮る事なかれ……。 そして、どのお話からも、素敵な感情が溢れている。どのお話を読んでも、残念な出来のモノはない。寧ろ、このお話のヒロインたちを、あなたは抱き締めたくなるはず。 とても、素敵な短編集……。
幼馴染であったり、歳の差があったり、戦場を共に駆けた戦友だったり。恋の形は様々で、想いを伝える手段も十人十色。そのそれぞれにドラマがあり、悲劇や感動がある。 彼らの恋路を見ていれば、それが特別であって特別ではない、という事実も見えてくることだろう。彼らにとっての恋はどれも特別であるが、それはきっと、探せば見つかるものでもあるのだ。 人は誰しも、恋物語の主人公になり得る。そう思わせてくれるほど、この短編集で扱う物語はバリエーション豊かであり、楽しませてくれる。「このキスで、さよならを。」のpeco先生が送る恋愛短編集、どうぞご覧ください。
恋愛といえば基本的に砂糖をぶちまけたような話が多い。勿論それだけではなく紆余曲折の過程があってしかるべきものなのだが、この作品集はそんな中でも濃い。ただ甘いのではない。酸味や苦味があるからこそその甘さが引き立つのだ。この作品集に収録されている話は、どこかに苦味がある。しかし、何度も言うようにただの苦味ではなく、どこかスッとすることだろう。
向田邦子はこう言った。思い出というのは、ねずみ花火のようなものだと。思わぬところで爆ぜて、記憶を呼び起こすのだそうだ。 書かれた物語を読んで、思い出したのはこの一節だった。 雪の降る駅のホーム、病院のベッドから見た空、夏の終わりに見つけた児童公園の広場に伸びる影、引っ越しのために片づけられた部屋に差し込む秋の日差しは、過ぎ去った記憶をかき立てる。 手渡された缶コーヒーの温かさを、どこまでも高い空の青さを、打ち捨てられた遊具の錆び付いたにおいを、荷物が運び出されるたびに空っぽになっていく心の行方を、私は知らない。けれども、知っている。 胸の中のねずみ花火は、今も、爆ぜ続けている。