評価:★★★★☆ 4.1
政略結婚の身代わりとして隣国に嫁ぐことになった没落貴族の娘、ソフィア。
嫁ぎ先の相手であるジュリアスを身を挺してかばい、重傷を負うが、彼の血を分け与えられたことで一命を取り留める。
だが、吸血種であるジュリアスの眷属となったはずが、ソフィアの身体にまるで変化は見られない。
吸血種の血に侵されない寵妃がいる。その事実が判明することで、彼女を取り巻く環境は気付かぬうちに変化し始めて──騎士令嬢と吸血公爵。ふたりの恋と信頼の物語。
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:ざまぁ
書籍化はまだであるか(待望)。色々な伏線が張り巡らしてあり、読みながらキャラクター達が見せる智略と謀略に魅せられていく。流れるように描かれた世界に、いつの間にか絡めとられている。本作では力強き者の苦悩と、力に囚われてしまった者の苦悩、といったテーマが語られている。力は持つモノによって武器にも凶器にもなる。そして、悪は環境によって悪になる。なればこそ、なにがディートリンデに凶器を握らせることになったのか。願わくば、なぜ今回の悪役が悪の道へ進むことになったかが知りたいかもしれないが、それを最後の最後に匂わせるだけに留めおくのも、筆者の力量の高さを思わせる。全てを語ればいいわけではないのだ。驚異的な構成力と文章力の詰まった作品であった。
初めは望まれた結婚ではなかったようです。血の支配、寵妃といった独特の婚姻をする吸血種の国へと嫁いだ主人公の女性が、恋心を温めて強く生きていく物語だと私は思います。彼女が魅力的なのは、『寵妃の資質』ではなく、その心の強さです。守られる女の子は数多いても、好きなヒトを守るために窮地に飛び込む女の子は、そんなにいないはず。『支配』されることもない彼女が、逆に奪ったのは好きなヒトの心か、読者の心か………