評価:★★★★☆ 4
──あたし達の関係は、ずっと三角なんだと、心の何処かで甘えてた。
見た目は中の上。性格はたぶん中の下。足して二で割ってようやく平均点の女子高生、楠恭子(くすのききょうこ)。
平穏で、平凡な毎日。彼女の代わり映えしない日常は、三年生になってのクラス替えで、片想いの相手、福浦晃(ふくうらあきら)と同じクラスになった事で大きく変わる。
晃と友人だという容姿端麗な美少女、立花玲(たちばなれい)を加えた恋のトライアングルは、微妙な緊張感を保ったまま月日だけが過ぎていく。
そして遂に、バレンタインデーに告白を決めた彼女(たち)の行く末は? そして彼の選択は? 決戦の日は、”ValentineDay(s)”※『開いた心の扉から』の、姉妹作品です。相互にネタバレ要素を含むので、了承願います。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
注意:R15
バレンタインデーなので本作へレビューを寄稿させていただきます。ちなみに小説作品へは初だったり。けして目新しいストーリーではないものの、丁寧な描写と筆致で、主人公たちの純朴な物語に引き込まれます。本作の一番の見どころは、思いがかなわずいろいろな形で訪れるいくつもの喪失感でしょう。ありふれた青春の一ページから非日常のできごとまでさまざまですが、個人的に出色のシーンは「【決戦は、Valentine Days】」。ネタバレになるので伏せますが、その回へ寄せさせていただいた感想のとおり、とりわけ寂々とした心地になり、実力を見せつけられました。数々の喪失・挫折が過ぎ去ったのちにたどり着く大団円で最後には報われ、じんわりとした読後感を得られます。なお、舞台が宇都宮なのですが、方言は特に用いられてないようでちょっぴり残念でした(方言萌え)
グラウンドに舞う白球、遠くから聞こえる管楽器の響く音、良い思い出も悲しい思い出もひとまとめに詰め込んだ甘酸っぱい学校生活の空気を感じ、追体験出来る作品です。書き終えた日記を読み進める毎に昔を思い出すように、読み進めれば主人公と共に感情を動かし、心地よい読書感を感じる事が出来ると思います。誰もが出会いと別れを繰り返して成長していきますが、その一つ一つの出会いや別れを大切にしたいと感じることでしょう。安心して最後まで読み進められると思いますので是非おススメしたい作品です。