評価:★★★★☆ 4.3
アメリカに住む日系アメリカスライムのモモは大学の夏休みを利用して日本を訪れていた。
その目的はかつて日本で暮らしていた祖父が話していたスライムでも入れるという温泉に入る事。というのも実はスライムはお湯に浸かると溶けてしまうからお風呂に入れないからだ。
これはアメリカ生まれのスライムさんが日本の温泉旅館のおもてなしや美味しい料理に感動しつつ温泉入浴を目指す物語。
はたしてスライムでも入れる温泉は本当にあるのか。
期待を抱いてモモは祖父の故郷である葛湯温泉へとやってくるのだった。
時代:未登録
舞台:ダンジョン
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
この作者さんは、童話やファンタジーというモチーフで私たちの暮らす世界をえぐるのがとてつもなくうまいひとです。説教くさくなることもなく、「こんな優しい世界になったらいいなあ」と自然と思えるのは実は相当に実力がないとできないことだったりします。物語の主人公は、日系スライムのモモちゃん。かつて日本で生まれ、今はアメリカに移民してしまったスライムの子孫です。おじいちゃんの故郷の温泉に入りたいと願っていたモモちゃんですが、なんと温泉は枯れてしまっていました。ショックを受けるモモちゃん。果たしてモモちゃんは、おじいちゃんの思い出の温泉に入ることはできるのでしょうか。モモちゃんの珍道中を見ていると、物語のネタには日本に来た外国人あるあるがたくさん含まれていることに気がつくでしょう。自身のルーツを探す旅を終えたモモちゃんとともに、私たちも少しだけ周りのひとに優しくなれたら……と思える物語です。
本作品はスライムが普通に居る現代世界を舞台に、日系スライムのモモちゃんが温泉に入る為に奮闘する話、と言ってしまえば簡単ですが、ファンタジー世界の産物であるスライムが現代にいるという非常識を、綿密な設定や日常の描写により、説得力のある常識改変を行ってきています。 特に往年の、なろうは勿論、全ての異世界ファンタジーの基礎を築き、この人無くしてファンタジー作品は無かったと言っても過言ではない三大ファンタジーの巨匠をリスペクトし、設定に上手く組み込んでいる点も非常に好感が持てます。 主人公のモモちゃんと人々との心温まる交流も読んでいてほのぼのとし、これが本当の優しい世界だと痛感できます。 貴方も是非、スライムがいないという常識の殻を捨てませんか? スライム沢山の日常へ行きませんか?