評価:★★★★☆ 4.3
※某新人賞の最終選考候補作を改稿、改題したものです。
大学四年生の米田は零細出版社でアルバイトをしている。そこはオカルトとヤクザという〝こわいもの〟つながりの二つのジャンルの書籍を主に刊行しており、米田は雑務やHPの更新の他に実話怪談の記事の執筆を担当していた。
ある日、米田は取材を最中に佐倉乃亜という女性と出会う。
彼女はオカルトマニアで実際に怪談の現場に足を運び、科学的に証明できるのかどうかや、再現性がある事象なのかどうかを確かめているのだった。
そして怪談の中でも特に「神隠し」について異常なまでに執着しており、自らもいつか異界へと行くことを夢見ていた。かかわり合いになりたくない米田だったが、乃亜につきまとわれる内に、二人して深夜のオカルトスポット巡りというまっとうではないデートを通じて距離を縮めていくのだが――。
時代:現代
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
その他要素
注意:R15
定型化された怪異譚には、その恐怖の原因となる過去の出来事だったり、場所の因縁だったりの「理由」が、最後に語られて話が終わることが多い。作られたり、お話として練り込まれたりしていない、本当の怪異譚は「理由」もなく、そして突然に終わる。この作品からも、主人公の職場環境の描写がリアルなこともあって、本当にあった怪異譚なんじゃないかと感じたりもするのです。もしかしたら、読者である私達も忘れてしまっているだけで、実は今現在、主人公と同じ立場にいるのかもしれません。