死亡フラグしかない世界へようこそ　～男装皇女の悪あがき奮闘記～

読むたびに涙がでます。雁字搦めの破滅エンドから逃れたいのに、自身を囲う鎖に囚われ、日々死の恐怖に怯えながら生きる主人公が哀れ。チートな能力を持って転生したわけでもなく、平凡に生きていた知識しかないのに、陰謀渦巻く権力の世界で足掻きながら生き残る道を探す姿は、涙なしには見れません。蜘蛛の糸のように頼りない生への希望を捨てきれず、また数少なくとも自分が守らないといけない人の命も抱え、望まぬ運命に揉まれた彼女の未来はどこへ向かうのか。

私はいつもレビューを書く時は、「これはこんなお話ですよ」と前書きでネタバレしない程度に書いていますが、この話はそんな風に一概には言えません。自分の思い、周りの思い、自分の存在意義、死への恐怖、大切な人達の事。主人公のそんな身が引きちぎれる程に苦しい、葛藤した思いが赤裸々に描かれていて、いつも感情移入をしてしまい涙を流してしまいます。皆様も泣きます、確実に。それ程までにこの物語は深く、センセーショナルな物語なのです。転生ありの物語ですが、全く気にならないと思います。重い話だけでは無いので、きっと様々な人に刺さることでしょう。読んだ事の無い方は読んでみて下さい。外で読む時は涙腺が緩まないようご注意を。

文章力がないのにレビューなど恐縮ですが、あまりに読み応えのある作品なのでつい筆を執ってしまいました。作者さんの他の作品も全部読んでいるのですが、この作品は群を抜いてシリアスです。男だと偽っている男装王子、というのは散見される設定ではありますが、もしその秘密が露見すれば自分もろとも周囲の人も処刑コース、という恐怖に苦しむ主人公に共感してしまい大変胸が痛いです。だんだん周囲にばれて、でも色んな人の助けを借りて、素敵な恋をしたりして、ハッピーエンド！という軽いだけのラブコメではないです。愛すること、愛に応えること、人を信じること、自分らしく生きるということ、深く考えさせられます。かと言って深刻なばかりではなく、クスッと笑ってしまうようなエピソードもあり、いきいきとした登場人物に心惹かれて読み進めるうちにあっという間に最新話まで読み切ってしまいました。これからの展開も楽しみにしています！