評価:★★★☆☆ 2.5

「な、にを…何をしてっ…!」

 ――ああ…。
 そんな顔をしないでください。

 これは…――。
 これは、貴方に対する謝罪なのです。

「何をしていると、聞いているんだ!」

 今にも泣き出しそうな顔をしないでください。

 でも…痛い…。痛い…。
 私は、夫である彼の目の前で…切腹をした。お腹が痛い…自分のお腹を刺したから当たり前だけど…。

「聞いているのかっ?!いや、それよりもっ…早く治療を――。」

 その言葉を聞いた私は、差し伸ばされた彼の手を払った。
 触られたくなかったからだ。
 汚されてしまった私を…貴方は、私に何時ものように優しく…愛しく…触れようとしていたから…。
 私の行動に驚いたのか、彼の差し伸ばされた手は硬直したまま…綺麗な紅い眼が見開き「何が、起こった?」と、言わんばかりの目で、私に訴えかける。

「…申し訳ご、ざいま…せん…旦那様…私の…身勝手を…お許しを…。」

 私は、腹部の痛みに耐えながら…なんとか言い切ることができた。
 しかし、その後の会話が覚えていない。憶えているのは、手の温もりと夫の「分かったっ…待っているっ…!」と、悲願の籠もった言葉だった。

 その言葉を聞き終えると…私は、静かに目を閉じた。


話数:全75話
ジャンル:

登場人物
主人公属性
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職業・種族
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時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

その他要素