顔のないビオラを愛でながら、魂回収役員という死神の仕事をこなすスペードエースNo.04。
失われた命。魂を回収するために、彼は黙々と仕事をこなす。死神界の社会のなかにも階級というものがあり、スペードエースNo.04という階級が高く、偉い立場のスペードエースNo.04に近づいてくるものはあまりおらず、またスペードエースNo.04の誰も寄せ付けないような孤高の空気や気難しい性格も相まって、ひとりでよくいるスペードエースNo.04であるが、そんな彼の様子や態度、立場などをあまり気にすることなくいつも気軽に話しかけてくる男がひとりいた。スペードエースNo.04を見掛けるたびに周りをうろちょろするその死神の男はスペードジャックNo.123という男で、喋り口調や見た目の華やかさが相まって軟派な男に見えるが、なかなかに愛敬があり、また遠慮なく自分に近づいてくるスペードジャックNo.123を奇特な奴だと思い、どこか煙たく思う反面心の底から憎いという感情も湧かず、なんとなく一緒に何気ない死神話や仕事の話をしては、きっちりと死神の仕事。魂回収役員という重要な仕事をこなしていく日々をおくるスペードエースNo.04。そんな彼にある件の魂の回収を頼まれるが、その魂は自殺をした者の魂であり、スペードエースNo.04は憂鬱な、どこか寂寥とした思いを抱き、溜め息を吐きながらも与えられた仕事をこなすために人間界へと向かう。
青森県北部の真冬の深夜。豪雪の吹雪が吹き荒ぶなか目的の人物。自殺者のもとまで歩み寄るスペードエースNo.04であったが、凍死自殺を図った女性の面差しにどこか懐かしいものを感じる。
どこかで会ったことがあっただろうかと不思議になりながらも、彼女を無事に看取り、魂を回収し終えるスペードエースNo.04は、その女性を通じて遥か遠い昔の記憶を呼び覚ます。
とても幸福で、とても残酷な、遠い遠い御伽噺のような記憶。けれど、御伽噺のように創られたものではない、確たる記憶。
自分が死神の仕事をこなすと誓った、忘れようもない記憶をスペードエースNo.04は思い出す。
顔のないビオラ
完結日:2020年2月22日
作者:佐野すみれ
評価:★★★★☆ 4
話数:全10話
ジャンル:純文学
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録