ＫＯＲＥ　～曇り鏡の国の声優見習い～

これは「神と人と獣の遅すぎた祝祭」を待ち望む声優少女の話

死と再生のギリシャ神話はかつて語られた。
春をもたらす女神はペルセポネーと呼ばれたと。
彼女が冥府に繋がれ、冬は誕生したと。
ペルセポネーが地上に帰還したときデーメーテールの春が咲き誇ると。

くしくも曇り鏡の国は、冬の季節だった。
声優見習いの少女ひちちかは、ぴょんなことからあるアニメ収録にぴょんと飛び入りで参加することになった。「エレウシスの秘儀」そう題されたアニメ収録は、獣じみた禍福の魔法にかけられていく。
ひちちかはその収録現場で出会ったプロ声優「須夜咲これ」に魅了される。
これは雪のように美しい白髪を持っていたから。
声優見習いの少女は、白髪美少女の神秘のわけをいずれ語るだろう。
冬が曇り鏡の国を死の匂いで覆い始めるかたわらで。
少女達の明暗が曇れども、復活の春は待ち望まれる。
獣じみた禍が、化け物の輪郭を携えながら来れども。
声優これの神聖さはこんこ殖えてゆく――。

聖者になるくらいなら、いっそ半人半獣神になる方がましという人間だ。＜ ニーチェ ＞

どうか春よ、これをこれのまま祝わせてくれ――。