評価:★★★★☆ 4
卯のはなのうき世の中のうれたさにおのれ若葉のかげにこそすめ
――樋口一葉日記『若葉かげ』より時は明治。
物書きにて生計を立てようと決意した奈津は、或る男性小説家のもとに弟子入りを志願する。彼女の為にあれこれ手を尽くし、熱心に指導してくれる『師匠』に、奈津はだんだん惹かれていくが……。
女流作家・樋口一葉の秘めたる恋を下敷きにした、エセ近代ロマン的物語。※時代背景等は調べた上で書いておりますが、史実と異なる部分も多く存在します。ご了承ください。
※『カクヨム』様に重複投稿しています。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:明治
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
切なく、狂おしい。女性の秘めたる情熱を、しっとりと書き上げた、ある恋の物語。ある男性作家の元に弟子入りした奈津。彼女は次第に師に惹かれ、愛するようになっていく……。しとしとと雨が降る日に読みたい……そう感じさせる作品でした。女性らしい、淑やかな文体。その底に流れているのは激しい想いの奔流です。女性が自分の想いを声高に主張できなかった時代に生きた奈津。どこか現代の女性にも通じるところがあるのかもしれません。情感溢れる恋物語。ぜひ手にとって、読んでみてはいかがでしょうか。
樋口一葉の日記を元に創作された恋物語。明治という時代が丁寧に描写されており、言葉遣いからも当時の人々の慎ましい生き方が感じ取れます。女性が自立したり主張したりするのは厳しかった時代、秘めた言葉を小説という形で発する奈津。小説家として大成するも、その狂おしいほどの想いは行き場無く彷徨って……。実話だけに、時代に翻弄された女性の哀しさが胸に迫ります。