評価:★★★★★ 4.5

 惨劇というものは誰かが何かを喪う所から始まる。
 その場面はとても美しく、せつない。
 とある理不尽に対して、我らどうしようもなく憤りを感じざるを得ない。
 そう、残酷なのだ。
 理不尽で残酷だからこそ、絵になるのだ。
 それは誰しも備え付けられた機能で、何者かの器にある者を奪わずにいられない。生きるために必要なものである。それを否定してはいけない。受け入れる必要があるのだ。人間のすべてが優しさでできている訳ではないと。
 シェイクスピアの悲劇を見るたびに私は思う。
 粛々ととした舞台の上で誰かが何かを喪った時、血泥にまみれてもがき苦しむ時にこそ、人は感情を剥きださずにはいられない。
 その感情が人間なのだと、美しいのだと、はっきりと私は自覚することがある。
 愛や友情だけがすべてではない。時には憎悪や憤怒が美しい時だってあるのだ。なぜなら、美しいものはすべからく鋭いものだ。傷つけるものだからこそ、人の心は傷つけられて死の間際までその心象を覚えていられる。傷が膿むから、苛まれるのだ。その心象に傷ついて打ちひしがれる自分と、克己する自分が戦って、明日への糧となるからこそ残酷な物語は紡がれるのだ。
 だからこそ、目をそらすな。耳を開き、鼻を開け。胸に手を当て、自分の鼓動を感じるのだ。物語に相対して、乾いた口の中の感覚を忘れるな。
 そう、すべてを感じるのだ。


話数:全4話
ジャンル:

登場人物
主人公属性
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職業・種族
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時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録