評価:★★★★☆ 4.4
中国でいう三国時代、倭国(日本)は、巫女の占いによって統治されていた。
しかしそれは、巫女の自己犠牲の上に成り立つ危ういものだった。
そのことに疑問を抱いた邪馬台国の皇子月読(つくよみ)は、占いに頼らない統一国家を目指し、西へと旅立つ。
一方、彼の留守中、女大王(ひめのおおきみ)となって国を守ることを決意した姪の壹与(いよ)は、占いに不可欠な霊力を失い絶望感に伏していた。
そんな彼女の前に、一人の聡明な少年が現れた。※一章のあとに人物相関図と地理的解説図、二章のあとにイラスト付きキャラクター紹介があります。
時代:古代
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:R15
「青虫はサナギにならなければ蝶々にはなれない。サナギになんか、ちっともなりたいと思ってないのに」本作を読みながらふと、とあるアニメの台詞を思い出した。多くの人間にとって変革は恐怖だ。今あるものが失われ、新しいものに移り変わったとき、「あの頃はよかった」と思うことを恐れ、変化を前に足踏みしてしまう。それでも蝶となってまだ見ぬ未来へ飛躍するためにはサナギとなり、苦しい変化の時を経なければならない。『ラスト・シャーマン』はその変革の過程――歴史の変わる様を描いた物語だ。登場人物たちは神の時代から人間の時代に移り変わる中で苦しみ、争う。その変化の時が詳細に、かつ抒情的に描かれているからこそ、彼らが蝶となって羽ばたいていく未来の幸福を祈らずにはいられない。歴史の変遷の中に美も醜も見出し、しっかりと削り出した贅沢な作品である。この作品に触れる喜びを、ぜひ多くの方に噛み締めてもらいたい。
この作品は謎多き時代を想いのいとで物語として語る小説。歴史は勝者の都合で語られる。残された文献にも嘘が記述されている。そんな曖昧な文献から真実を知ることも探すことも不可能に違いない。それでも想いは過去を求め、魂は、霊は神の声を求める。正しきを求め生きた者が王としてあったなら‥ラスト・シャーマンは夢物語のようだ、史実として語られる限られた現実の欠片を集め、それを素材として理想と夢で希望を紡いだ夢の物語。確かにラスト・シャーマンの世界で描かれるのは想像に過ぎないが、その想像の中で神話として語られる者達は息をし、涙し、愛を感じながらも嫉妬に苦しみ、悶え、悩み、神に答えを求め、神の声を失った時に気づく。問いかけが見えない答えだと。僕はこの作品を読むことを強く求めます。読んだ僕が作品を描かせた神の想いを強く感じたから。
いやぁ、まずは印象深いキャラクターと作者さまの作品に対する愛情が見えるあたりにうっとりしてしまいますなぁ。さて、この作品は『邪馬台国あたりの歴史が好きな人にはとってもたまらないぞー系四コマ漫画添え』ですなぁ。まず、ストーリー設定や作風、そしてキャラクター個性や想いの配置が上手く機能してクヴァルテットの音色バランスのように読者をその世界観に引き込みますなぁ。邪馬台国とは何ぞや? と言う読者さまも楽しめながら読める作品に仕上がっているところがグッドジョブ!そして、読み終わった感動のまま突き進む四コマ漫画……まさしく、ディナーのデザートまでついているおもてなしぶり!皆様、六月の夜長にゆったりまったりとこちらの作品を読まれてみてはいかがでしょうか。
倭国は、巫女の占いに よって統治されていたが、それは巫女の自己犠牲 の上に成り立つ危ういものでした。 伯母の卑弥呼の壮絶な死のシーンから物語ははじまります。 このままではいけないと決意した 月読は、占いに頼らない 統一国家を目指し、西へと旅立ちます。 月読は各国の豪族を婚姻や同盟や戦で統一していきます。 一方、留守は壹与が女大王として統治しますが、占いに不可欠な霊力を失い絶望感に苦しみます。 そんな不安定な壹与を男鹿が支えます。 月読の統一は意に添わぬ婚姻や、華やかな計略もあり、流血の戦いもある大変な闘いでハラハラ、ドキドキします。 しかし、邪馬台国を護る壹与と男鹿の闘いも苦しいものでした。 過去のロマンに酔える物語です。
緑濃く広がる台地、古代から日本は神の国であり、そしてそこに息づく人々が築き栄えさせてきた壮大なドラマ。 目をつぶればその美しい壮大な景色や迫力ある戦闘、神秘に包まれた儀式の様子がそこに広がる。 ともすれば香りまでもが想像できてしまうほどの描写は、見事としか語りようがない。またその流れるような文章には言い淀みがなく、緩急も剛柔も兼ね備えている。 愛し合いながらもそれを試され、勝ち得たそれぞれの男女に思いを馳せ、何度も涙を流した。特に4章の後半は涙が止まらなかった。 それぞれのキャラクター設定も綿密で、まるで作者の中で確実に生きておられるかのような様である。その魅力の証拠に、イラストを寄せられるファンが後を絶たない。 作者本人による添えられたイラストも美しく、相関図もわかりやすい。何より男性が何とも魅力的に描かれている。それぞれにファンが付くのも納得だ。
と、声高に叫びたい。もっとも、私はこの作品の舞台となる時代が苦手で、ゆえに知識も殆どない(歴史そのものはとても好きにもかかわらず) そんな理由で、「ラスト・シャーマン」が面白いらしいとの噂を目にしつつも、なかなか手を出せないでいた。 何がきっかけで読もう!と決めたのかは今となってはどうでもいいことなので省くが、読み始めてすぐにこの作品に憑りつかれた――まさに巫女を扱った小説である! きっと多くの人を魅了するに違いないこの作品、文章が綺麗である以上に、構成と人物の配置がとにかく見事。これだけ魅力的な人物が多く、個性を浮き彫りにした作品はそうないのではないか? きっと静かな感動に包まれることと思います。「ラスト・シャーマン」おすすめです!PS ラストの4コマ漫画もw
古代、三国時代の中国に狙われる日本の領土。 巫女の自己犠牲とその危うさを誰よりも知る月読が、統一国家を目指し立ち上がる。 壮大な世界観と、戦乱の中で生まれる愛と友情の歴史ロマンがここにある。 魅力的なキャラが織り成すヒューマンドラマが描かれており、戦記であり、群像劇でありながら目が離せないほど読み手を、感情移入をさせてしまう巧みな描写には、ただただ感服するばかり。 情景を彩る美しい描写に、想像で描かれたとは思えないほどの造詣の深さ。 涙なしには読めないラスト。 是非、お勧めです!
愛か、国か。人か、それとも神か。巫女による統治という非近代的な政治構造の元。歴史上のヒロインたちが、悩みもがきながらも、自らの信じる正義に向かって、茨の道を切り開いていく。一人一人は異なる奇跡を辿っていても、彼らの想いは同じ大地の上を走る。それらがついに繋がり合う時、歴史は動き、来るべき新たな時代は愛に満ち溢れる。卑弥呼死後の古代を舞台とした、壮大歴史劇。
《邪馬台国有力候補地・奈良県纏向遺跡で 宮殿~大型建物物跡より 朝鮮半島製陶製土器片出土…!》 讀賣新聞6/18抜粋 「そんな古代のことピンとこないよ!」 と思ったあなた! 《ラスト・シャーマン》 長緒 鬼無里 著を読んでみて下さい! この土器片の造られた3世紀後半から4世紀 邪馬台国は女王卑弥呼から壹与(いよ)の時代―― 占いに頼らない新しい国の形を目指して生きた人々 皇子 月読(つくよみ)はじめ多くの古代人の姿が 優しくも気品溢れる美しい文章で綴られています。 古代の息遣いが 愛と祈りが 夢と涙が 抱擁と殺戮が 鮮明に蘇る……! ほら、もうあなたは、土器片を拾い上げて叫ぶはず。「懐かしいな! あの日贈り物として、半島の伽耶国より 我が女王に届けられた酒の入っていた両耳付壺じゃないか!」 *:..。o○ ○o。..:*
女王卑弥呼と同じく、壱与も謎多き女性。今に伝わる諸説や地理的条件から昔の人々の骨格を作り上げ、魂を吹き込む技術は大したものです。物語の人々は皆必死で生き、自分なりの戦いを行い、人を愛していきます。その様子はとても迫力があり、惹き込まれました。もしかしたら本当に「こう」だったのかも……読者をひと時、そう思わせ、浸らせてくれる物語を読んでみませんか?