評価:★★★★☆ 4.2
「別説 太平洋戦史」最終話です。
乾坤一擲の大勝負に辛勝した沖縄戦後、総合作戦本部は消耗した航空戦力及び空母部隊を立て直すだけの時間的余裕が無いと判断した。
それでも侵攻確実なソ連軍を食い止めるべき掛井は奔走する。その一方で掛井の脳裏には既に大東亜戦争遂行に対する「大儀」は消失しており掛井の考えに共感する関係者達は何時、どの時期でどんな形で「終戦」に持ち込むのかを模索していた。
「陸軍超大国ソ連」の侵攻を果たして食い止められるのか。
ここに日本国の存亡をかけ、正に本当の意味での国土防衛戦となる日本軍陸海空の総力を結集した対ソ戦「決号作戦」が発動される。この侵攻を食い止められなければ掛井らの想定する「終戦工作」に大きな狂いと未知の悲劇が日本に覆いかぶさってくる。
「無敵関東軍」を自負し続ける独立軍的存在の関東軍首脳部と、掛井ら総合作戦本部とが繰りなす確執。
ソ連戦を通して見え隠れする「関東軍」「満州国」「国民党軍」「ソ連軍」「米国」「日本政府」らがそれぞれの立場において繰り広げる画策と狡猾な取引。
どうぞ終戦まで?ぜひお付き合い下さい。★現在、本作内登場人物を仮名から実名へと改訂作業をしています。2部まで終了。
3部、4部と続けて改訂していきますので、読んでいる方のそれに間に合わない場合はごめんなさい。
話数:全99話
ジャンル:エピック・ファンタジー 歴史
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
この第4部のあらすじを物凄く簡単に言うと、南下してくるソ連軍、原爆、アメリカの思惑、戦争継続を主張する陸軍、など様々な問題を抱えるなかで主人公はよりよい終戦を迎えるため奔走する話です。他の戦記ものによくある、一方が大勝利する、首脳部を排除する、敗北を簡単に認めるといったシーンは無く、主人公がソ連戦で時間を稼ぎつつ、終戦工作を進めていきます。この物語は転生者、架空兵器、敵のありえない慢心、は登場しません。あくまでも史実に沿った流れの中で、起こりえたかもしれない現実的なものばかりです。個人的にお勧めのシーンは終戦を迎えるシーンですので、ぜひそこまで読んでみて下さい。
近年、架空戦記、それも第二次大戦の架空戦記の数が徐々に増えつつありますそんな中、この作品はよくありがちな架空戦記とは毛色の違う架空戦記です例えるなら工場で大量生産された物品ではなく、職人が手間暇掛けて作り上げた至高の逸品小説の至る所に散りばめられた人物描写や日常風景、戦場の泥臭さや凄惨さ、軍人の意地や史実の出来事、当時の人々の言語なども入り混じり、それらが巧みにブレンドされており、読んでいく度に「次はどうなる、どうなるんだ……」とワクワクさせられるものがあります架空戦記が好きな人、また架空戦記を執筆している人、その中でこの作品を読んでない人がいるのでしたら是非読んでください。大長編で活字量もちょうどよく、スルスル読めること間違いなしその上、ストーリーも練られている反則級の作品です
大東亜戦争架空戦記の作品の多くは、この”なろう”ないでもよく見られる、転生、架空兵器を登場、設定に取り込みますが、この小説はかなり現実に沿って書いてあります。また、作者も資料や記録等をよく読んでいるようで、この小説に対する意気込みが感じられます。物語が破綻した話も無く、負けは負け、勝ちは勝ちをきっちり描き、私にとって更に此の作品を良作、と言わしめている要素、其れは、疎かに成りがちな「兵士達の人生」です。コレまで多くの架空戦記は、将兵が小難しい戦術の描写は多く出るのに、其れを支える兵士の描写は少なく感じた。この第四部は、戦中の陸兵や海兵、航空兵の会話が多く出てきます。この描写は、私を其の会話を近くで聞いている、つまり作品に引き込んでくれる。彼らの人間臭い本音が、何とも言えぬ面白さを与えるのです。 架空戦記とは、こういうを物言うのだと思った作品だった
この作品。作者のプロフィールを見るとわかるのだが、真面目に戦記創作を続けている。現在、4部作の内の最終部であるが、内容的に非常によくできている。作者の独創的な発想で戦う対米戦。これまでにない発想と、現実味が想像でき、読み続けていても非常に飽きがこない、読者の意表を突く優作。ここのサイトに多い、「転生」「チート」「凄すぎる兵器」など登場させる事なく、見事に米国、ソ連と戦う。一方的に日本が勝つのではなく、お互いに勝ち負けのバランスもとれており、非常に優れた作品。「チート」ものに飽きた方には、ぜひお勧めの1作です。うーーーん、このまま埋もれていくのは勿体ない。
このシリーズを読み続けていますが、太平洋戦争を題材にしたIF戦記物ではかなりランクの高い作品の部類に入ると思います。IF戦記にありがちな「転生」「架空兵器」は登場しません。この作品の面白さは作りこまれた物語の内容と戦闘描写のリアル感にある。陸戦、開戦、空戦の描写は結果や推移でその状況を伝えるのではなく、その場面で戦闘に直面した人々の目線で戦闘描写を伝えている為、かなりリアル感がある。また、物語の進行を説明と解説で進めるのではなく「会話」で進めて行くところにもこの作品の面白さがある。日本陸海軍の古典的で凝り固まった概念を主人公が「合理性」で説いていく話の進行が妙に納得できるのである。軽く、テンポよく架空戦記を読む方にはたぶんこの作品は重すぎて合わないかもしれないが、深く、落ち着いて架空太平洋戦記モノを読みたい方には極上の作品だと思います。