おとぎ話は未来をくれない 完結日:2016年1月6日 作者:うわの空 評価:★★★★☆ 4.3とある孤島にある天才育成学校。その学校の劣等生である斎藤卯月は、学年一の優等生、山田実と徐々に仲良くなっていく。 しかし、二人はそれぞれ『誰にも言えない秘密』を抱えていた――。 何が本物で、何が偽物か。 何が真実で、何が嘘なのか。 静かに、けれども確実に進んでいくおとぎ話を、あなたに。 話数:全33話 ジャンル:現実世界恋愛 青春 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 中学生 時代:現代 舞台:学園 雰囲気:シリアス切ない 展開:バッドエンドハッピーエンド その他要素 サヴァン症候群 ほのぼの 秘密 注意:残酷な描写あり なろうで小説を読む
絶海の孤島にある天才育成学校に在籍する平凡な女の子の初恋と成長の話。本レビュー主題の通り、児童書テイストの美しい文章で物語は進んでいきます。まさに、やられた!!!の一言につきます。読了後思わず「あああああ!」と画面の前で泣いてしまいました。大昔に「ごんぎつね」や「スーホの白い馬」を読み終えた時の、あの感覚!!!本作品では悩みすら色鮮やかに変える青春時代の宝物の輝きと時間の残酷さが丁寧に描写されています。ひねくれすぎて三回転ぐらいした大人の涙腺にも効いた、童心に帰れる珠玉の一作。確かに目の前に在って手を合わせることが出来るのに、決して重ならないもどかしさ。おとぎ話は未来をくれなかったけど、最後はどうなるのか。読んで叫んで幼かったあの頃やあの場所に思いを馳せる、そんな作品。
天賦の才を与えられた少年少女が、青春時代を過ごす学校があるのは絶海の孤島。そのなかで唯一平凡な少女と、天才的な頭脳をもつ少年との淡い初恋が、丁寧な心理描写と共に書き綴られていく。少年は知っていた。「寂しい」そして「悲しい」という言葉を。しかし少年は知らなかった、「寂しい気持ち」を。「悲しい思い」を。少女は秘密を抱えていた。逃れられない呪縛を誰にも打ち明けられずに、未来に夢を持てなかった。全てをあきらめて生きてきた。お互いの真実を知って尚、彼らが抱くものは祝福なのか。はたまた破滅か。彼らの選択は何度読んでも、せつなく心を揺さぶってくる。彼らのやさしい嘘を、貴方はどう感じるだろうか。不器用で。純粋で。ひたむきな彼らの思いを、ぜひ読んでもらいたい至高の物語りである。
本物と偽物。真実と嘘。普段私達が何気なく使うこの言葉。私達が、色々な物を判別する際に使うこの言葉。でもその判別って結構無意識的に行われていて、私達の主観なんて曖昧なんだなぁと。この作品を読んだ後私は、そんな曖昧な物の意味と重要性を再認識しながら、様々な物に対する意識的な判断をしっかりしなければなぁと感じ、考えさせられる作品だなぁと思いました。本文そのものも勿論素晴らしく、二つの視点から描かれる展開や精神描写はとても緻密で「うつくしく」(平仮名な意味は本文読めば分かります!)、取り巻く世界観の設定も難し過ぎない程度によく練られており、終盤の展開はとても感動できます。考えさせられる要素と娯楽性がどちらも非常に高い水準で纏まってる、正に「名作」と言うべき作品です。絶海の孤島で秘密を抱えた少年と少女が繰り広げる御伽噺、宜しければ是非読んで下さい。
「ぼくがいなくなったら、君が笑う季節がやってくる。色とりどりの花が咲いて、その周りを美しい蝶が舞う。新しい命が次々と生まれるんだ。だから君は、ぼくがいなくなってもひとりじゃないのさ」―――作中で、おとぎばなし「さむがり猫と雪だるま」の一節として紹介される台詞です。本作品を全部読み終えてからもう一度この台詞に戻って読んでみてください。そこに込められた作者の深い思いに初めて気付くはずです。 斬新なアイディアで大胆にストーリーを展開しながら少しも物語が破綻していません。いくつもの伏線が見事に張られ、回収されていきます。第6章の海の描写は圧倒的で、そこから物語りは一気に盛り上がり、その先が気になって最後まで目を離すことができません。しかも深く考えさせられる……。 この物語はハッピーエンドかバッドエンドか? それはあなたが読んでみないと分からない。
ともかく、面白いです。 誰かを好きになる瞬間が丁寧に描かれていて、『本物と偽物』『真実と嘘』について深く考えさせられます。 舞台は、とある孤島にある天才育成学校。その学校の劣等生である斎藤卯月は、学年一の優等生の山田実と少しづつ惹かれあってゆきます。「あれ? ありがちな学園恋愛もの?」と敬遠せず、第二章まで(できれば第三章まで)読み進めていただければと思います。章ごとに語り手が切り替わり、『誰にも言えない秘密』を抱えた二人の内面が描かれてゆきます。 そこまでに何か心に響くものがあったら、是非最後までご覧になってください。逃げられない残酷な現実と、その中で育まれる『うつくしい』物語に触れることができると思います。