評価:★★★★☆ 4.4
レオンは美しい人でした。でも、レオンは断頭台で死にました。三十にもならぬ若さでその生を終えました。重い刃が落ちたとき、血に彩られ、夕闇の中、生きているときよりもなお美しく、その顔を輝かせたに違いありません……。
仏蘭西革命で活躍した一人の若い政治家の婚約者が語る。
気の強い少女が愛した青年の姿。それは革命の中での非情な決断を続けなければならない苦悩、理想とかけ離れ行く現実の世界への絶望。
理想の社会を夢見た情熱と、愛情の行方は――。無断転載、無断複製を禁じます。
話数:全10話
ジャンル:歴史
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
これは二人の出会いからレオンが断頭台の露に消えるまでを描いた歴史小説です。仏蘭西革命で国のために生きた男レオンと、その婚約者アンリエット。兄の友人であったレオンに恋をして、レオンもアンリエットに求婚してくれた。婚約者となった二人だったが、レオンは革命のため戦う者。アンリエットが願うだけそばにいて、同じ強さの愛を返すことはできない。やがてレオンがアンリエットに求婚した本当の理由を知り、アンリエットの心は乱れる。悪とみなされ処刑された者たちにも愛する人がいて守りたい生活があった。仏蘭西の歴史に興味がある方は、ぜひお手にとっていただきたいです。
読了して、ずいぶん時間がたちました。未だにこの作品の事が頭から離れません。印象的だったのは、人物たちの台詞のかずかずです。力強い言い回し、それを唇から吐き出している時の表情、息遣いまで思い浮かぶようでした。女性の潔さ、強さが心に残り、ああ、フランス革命の時代に生きている女の人なんだなと感じました。フランス革命は書き手にとって、とても魅力的な題材だと思います。色々な視点から描けるでしょうし、無数のドラマがうごめいている。魅力的な題材だけど、同時に、手ごわい題材だとも思うのです。フランス革命を、丁寧に、力強く、ドラマチックに描き出しているこの作品。ぜひ、たくさんの人に読んでいただきたいです。
美しい文体で綴られる歴史によって、私たちは知る。ロベスピエールの名を。サン・ジュストの名を。記録の上での形而上の存在が、血肉を伴った形而下の存在として……親しい者として、美しい文体のなかに甦る。それは歴史ではない。歴史と錯覚させられる物語である。美しい。ただただ美しい。ここに書きつらねる言葉も、ただただむなしくさせるほどに。それでも私は無謀にも、書かずにはいられない。私たちが学ぶべき美意識の凝集がここにある、と。