評価:★★★★★ 4.5
レントリア国の末姫エセルは、魔物の来襲から城を救ってくれた若い剣士と心を通わせるようになる。けれど彼には、隠し通さなければならない秘密があった。
エセルは彼の心にさらに近づこうとするが、秘密が明らかになったのは、彼が魔物と闘っているそのさなかだった。
相討ちのはてに川に転落していく剣士。けれど誰もがその死を信じた数日後、彼が川下の土地にある丘の上で生きているのではないかとの情報が入る。
会いたい一心で城を抜け出すエセル姫。道案内をしてくれる少年の助けを借りながら丘を登った彼女が、やがて出会った真実は……。現在の状況と過去の回想が交互に語られ、結末に向かって収斂していく構成です。
人を好きになる気持ち、思いやる気持ち。切ない気持ち、うれしい気持ち。生きたい気持ちと死にたい気持ち。
そうしたものを、西洋中世の美しい自然と一緒に、きれいな文章で表現することをめざして書きました。
(自サイトにも転載しています)
話数:全28話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:中世
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
『出会いの窓は南の塔に』は姫君エセルと、彼女の危機を助けた剣士ラキスを巡る、恋愛ファンタジーです。約7万6千字で完結しており、2019年現在は続編『光と闇の間にありて』が連載中です。主人公のエセルは高貴な身分ながらも、目的のためには農作業ブーツを履きこなす、たくましい女性です。はねっかえりなエセルと、少年の面を隠したラキスの恋模様。ふたりの関係は時に辛く、時にほほえましくて、応援したくなります。それから情景描写が素晴らしく、ひとつひとつの場面が絵で浮かびます。クライマックスはとても叙情的で、心震えるものでした。『出会いの窓は南の塔に』は秋の読書に、おすすめしたい物語です。中世の景色に憧れる方、逆境をはね返す恋がお好きな方、どうぞお読みください。
続く物語「光と闇の間にありて」が素晴らしすぎるので、ぜひこの物語を手に取ってください。とにかく読んでください。魔物の襲撃を受けて大ピンチのお城に天馬に跨って颯爽と現れたなんとも淡白な勇者さま。そして、ちょっと風変わりなお姫さまとの出会い。物語はそんな出会いを果たした勇者が、魔物退治後に行方不明となったところから始まります。勇者の目撃情報を聞いた姫がいてもたってもいられず、たったひとりで捜索に行ってしまう。その時点でお姫さまが、まさか、そんな、ばかな、という展開。そうでありながら、姫が決して武芸に秀でているわけでもなくいたって普通の女の子であるところがこの物語の素敵なところです。勇気と根性は誰にも負けていませんが。勇者の捜索中に、2人の馴れ初めが少しずつ紐解かれていきます。文章がとにかく美しい。まるで綺麗にラッピングされた包みをひらいていくような感覚になります。お薦めです。