俺は石ころじゃない、礫(つぶて)だ!桶狭間前夜を駆ける無名戦士達の物語。
永禄3年5月19日の早朝。桶狭間の戦いが起こるほんの数時間ほど前の話。出撃に際し戦勝祈願に立ち寄った熱田神宮の拝殿で、これから死地へと向かう若き織田信長の眼に、彼方の空にあがる二条の黒い煙が映った。重要拠点の敵を抑止する付け城として築かれた、鷲津砦と丸根砦とが、相前後して炎上、陥落したことを示す煙だった。敵は、餌に食いついた。ひとりほくそ笑む信長。しかし、引き続く歴史的大逆転の影には、この両砦に籠って戦い、玉砕した、名もなき雑兵どもの人生と、夢があったのである。
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本編は「信長公記」にも記された、このプロローグからわずかに時間を巻き戻し、弥七という、矢作川の流域に棲む河原者(被差別民)の子供が、ある理不尽な事件に巻き込まれたところからはじまります。逃亡者となった彼は、やがて国境を越え、風雲急を告げる東尾張へ。そして、戦地を駆ける黒鍬衆の一人となって、底知れぬ謀略と争乱の渦中に巻き込まれていきます。そして、最後に行き着いた先は?
※ 半年前に投稿したバージョンと、主要なストーリーは変わっておりませんが、各所の文章や表現を見直し、さらに読みやすくした完全版が出来ておりますので、せっかくなので掲載いたします。各章細かく分割したので、さらに読みやすくなっていると思います。よろしくおねがいします。
<主要登場人物> ※登場順
織田信長 尾張の王
弥七 河原者
ねずみ 盗人崩れ
おこと 養蚕荘園の奉公人
今川義元 東海三国の王、「海道一の弓取り」
松平元康 義元の客将。のちの徳川家康
藤七 口入屋
源蔵 黒鍬の棟梁
佐久間大学 織田家の重臣
おしの 大学の配下
岡部元信 鳴海城の城代
伝左 鳴海城の牢番
木下藤吉郎 信長の配下。足軽大将
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