評価:★★★★☆ 4.2
佐々木景久の竹馬の友たる池尾彦三郎。彼は、果し合いをする事になったのだという。
立ち合うは後藤左馬助。彦三郎の父に己が父を殺され、その復讐の為に諸芸を修めたという触れ込みの男である。
秋月道場の末席を景久と争う彦三郎である。斯様な武術の化物と対峙をすれば命はない。
当人同士のものならぬ怨恨ならば生きるの死ぬのにまで及ぶ必要はあるまいと、景久は彦三郎を救うべく知恵を絞るが……。
話数:全5話
ジャンル:歴史
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
何に重きを置いて生きるのか。金か名誉か、愛か友情か、恨みか嫉みか。価値観は人それぞれで、それゆえに人は虎にも化け物にもなりうる。けれどそれは己が選んだ道であることを覚えておかねばならない。道を進むも戻るも自分次第。たとえその始まりが、父や母の因果によるものだとしても。亡き父の恨みを晴らすという名目の果し合い。命のやり取りは避けられそうにない。親友が直面する事態に、男は苦悩する。強ければ何をしても良いというのか。男の問いは夜の闇に溶け、ふわりと優しい仄かな光を見せてくれるのだ。迷いびとに道を指し示すかのように、ひっそりと咲いた白梅の花明かりのごとく。すべてをわかっている菩薩のような妹と、薄々勘付いていながらもあえて言葉を飲み込んだままの親友。その二人の横で、今日も男はうとうとと惰眠をむさぼっている。世はなべて事もなし。虎は穏やかに眠り続け、昼行灯は酒を呑みつつ喜ぶばかりである。