評価:★★★★☆ 3.6
『父正成と兄正行の意志を継ぎ、南北朝の動乱を収めることに、その生涯を捧げた武将の物語』
主人公は楠木正成の三男正儀。物語は父正成の挙兵に始まります。鎌倉幕府を倒したものの、後醍醐天皇の親政は長くは続かず、朝廷は南朝と北朝に別れます。南朝軍の主力となった正儀は、北朝の幕府と戦いながらも、和睦を求め奔走します。南朝内で和睦派と強行派の対立が深まるなか、正儀がとった驚くべき行動とは? 果たして南北朝の合一は成るのか? 楠木正成の時代と、一休さんと足利義満の時代とを橋渡しする正儀の生涯。二転三転する激動の南北朝時代を、ぜひ御堪能ください。※小説投稿サイト「カクヨム」から転載中!
話数:全54話
ジャンル:歴史
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
まず楠木正儀を取り上げて鎌倉末期から南北朝合一まで描き切るという題材に脱帽。大楠公、小楠公と比して『太平記』での扱いも小さく史料に暗い人物と時代が、こうまでありありと仔細に語られるとは。浅学の身にて、楠木正儀のことは忠勇の士であった父や兄と異なり両陣営を転々とした、つまらない男と思っていました。その楠木正儀を、南北朝合一に尽力することで忠孝を果たした人物と捉える視点に目を開きました。大楠公は人口に膾炙した英傑なれど、湊川以降の時代の移り変わりや楠木一族の行方を仔細に綴った書籍は未だ少ない印象。本作の書籍化と、それによって楠木正儀と南北朝時代の再評価が進むことを期待します!
本格的な南北朝ものです。転生やファンタジーのようなトリッキーな展開が好きな方には合わないかもしれませんが、史実に基く歴史小説を期待する人にはもってこいの一冊。大河ドラマの世界観です。 南北朝と言えば、吉川英治の私本太平記、山岡荘八の新太平記、また北方謙三の南北朝ものが有名ですが、いずれも、南北朝時代の前半で終わります。 その点、これは、時代の終焉までが描かれています。出版されれば、分裂から合一までの、新たな南北朝もののスタンダードな一冊に成り得る小説と思います。 長編ですが、テンポの早い展開で飽きません。転生やファンタジーではない、史実に基づいた話ですが、展開に興味津々。そして時代の終焉に向けて自然と目が潤みます。 南北朝時代は、まさに戦国時代や幕末に匹敵する題材だと思います。