評価:★★★★☆ 4.2
18、19世紀を生きたドイツの哲学者イマニュエル・カントが現代の日本で目覚め、少しばかりの滞在を楽しみます。哲学の講釈話とかじゃないです。カントIF。いやカント雑学集。完全に自分のために書いています。
※「語り手」の視点が、話によって哲学者カントと大学生律くんとの間で入れ替わります。各話タイトル参照。
※所々、フィクションに見えにくいフィクションが入ります。「ペリメニ」「アンタレス」「バッハ」「批評後の哲学的説教」の話は筆者による想像です。その他、事実に合わない描写や修正した方がいい点の指摘は大歓迎です。
※あとがき(ネタバレ注意):https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1622972/blogkey/2378434/
話数:全25話
ジャンル:
時代:18世紀
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
もし、織田信長のような戦国武将が現代日本に蘇ったら。きっと、知恵とカリスマで無双するのではないか。特にそれが『なろう』内ならばなおさらのことだろう。ならば……いにしえの哲学者カントが蘇ったのなら、どんな無双っぷりを見せてくれるのか?哲学を不正に利用して巨額の資産を形成した悪徳哲学者を懲らしめるのか?かじっただけの哲学を利用して町娘を誑かす色事哲学者を成敗するのか?そんな哲学者はいないし、そんなストーリーでもない。無双はしない代わりに、ぶれることのない芯で一人の若者に指針を与えるカントには惚れ惚れします。哲学の本質がここにある!インテリ系エンタ小説!結構笑えますよ!
哲学者・カントをご存じの方もそうでない方も、「哲学者のはなし」となると身構えてしまうかもしれません。何か専門的な言葉が並んだり難しい概念の説明をされると思うと二の足を踏んでしまいますが、この作品は違います。愛すべき人間性を持ったひとりのカントおじさんについて軽快な筆致で語られるため、まるでご近所のおじさんの話を聞いているようです。一話一話にちゃんとした裏付けがある、哲学小噺ともいえるこのおはなし。筆者のカントに関する愛と知識が贅沢なくらい惜しみなく盛り付けられていて、読んでいるととてもほのぼのしてきます。哲学の話は苦手だけど……という方に、ぜひ薦めたい作品です。